銀座数寄屋通り法律事務所[旧 中島・宮本・溝口法律事務所] >HOME

弁護士 宮本 督

エッセイ:
to be a Rock and not to Roll

2001.07.11

eビジネスとロー

 ファッション関連の業界は、法律問題がまったくなっていないというのは、弁護士の間では知らない人はいない。見かけの華やかさと、裏側のいい加減さのギャップには、毎度のことながら驚かされる。現在も、倒産した被服メーカーの破産管財業務を取り扱っているが、販売先と思しき取引先との関係も、長年にわたって結構な金額の取引がされているにもかかわらず、契約書の一つもないことの方が多く(というより、契約書が存在するのは、極めて珍しい。)、事後処理には本当に辟易させられる。もちろん、法律に対する意識の低さは、ファッション業界に限った話しではないが、それにしても、この業界は、法律問題については本当にメチャクチャというしかない。
 しかし、この業界に輪をかけてひどい業界があらわれた。それが、eビジネスと呼ばれる業界で、特にネット系ベンチャー企業の商売はすごい。1億円を超えるビジネスで、契約書のないままスタートさせたり、あるいは、契約書(らしきもの)があるにはあるが、意味が不明だったり、自社が用意して相手に署名させたたはずの契約書が自社に思い切り不利なようにできている(どこからか契約書を入手して、そのまま、契約者の名前だけを変えて、意味も分からないまま使っているとしか思えない。)ものも少なくない。上場しているような企業でも例外ではない。契約の相手方との信頼関係が保たれているうちはいいが、一度トラブルになると、解決のためによって立つルールが存在しないばかりか、そもそも、何の仕事を発注(受注)したのかもよくわからないという事態だって多いのである。
 ネット系ベンチャー企業の皆様、渋谷方面などで、お元気でお過ごしのことと存じます。しかし、悪いことは申しません。ITを、「イット」と読むかつての総理大臣を鼻で笑う前に、自らの足下を固めることも、少しはお考えになってはいかがでしょうか。私たちの書いた『eビジネス・ロー』(弘文堂)も、「大手町ではよく売れるのに、ビットバレーではまったく売れない。」と、担当編集者の方が首を傾げておられました。