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NAKASHIMA MIYAMOTO ATOORNEYS AT LAW
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to be a Rock and not to Roll 宮本 督
原告は第二東京弁護士会に所属する弁護士である。
 判決(東京地方裁判所平成13年7月13日判決)が公刊されるそうなので、もう書いてもよかろう。私は、今年、ある商工ローン業者に対し、訴訟を提起した。代理人として提訴したわけではない。私自身が原告となったのだ。訴状の冒頭は、「原告は第二東京弁護士会に所属する弁護士である。」。
 私の依頼会社には、商工ローンから借入があった。私は、この債務整理の交渉にあたっていた。弁護士がいわゆる債務整理を行う場合には、貸金業者に対し受任通知というものを発送する。依頼を受けた弁護士によって債務の処理を行う旨の通知である。そして、監督官庁(大蔵省銀行局→金融監督庁→金融庁)の通達(今では、「ガイドライン」というが、名前以外、何も変わっていない。)は、貸金業者に対し,「債務処理に関する権限を弁護士に依頼した旨の通知,又は,調停その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に,正当な理由なく支払請求をすること」を禁止している。昭和50年代に社会問題化した「サラ金悲劇」において,貸金業者の苛酷な取立行為が返済の困難な者をいわゆる夜逃げや自殺等に追い込んだことによる規制である。
 この通達が出て以来、貸金業者は概ねこれを守っている。そして、債務整理案件を手掛ける弁護士は、自らが貸金業者による取立からの防波堤となり、貸借の関係を法律に従って処理をすることになる。貸金業者が、このようなルールを守るなら、債務整理の案件は、通常の弁護士報酬より安価に引き受けることができる。そうすると、借金に悩む人の多くが弁護士に依頼することができるようになり、貸金業者の暴利から逃れられることになる。
 そんなわけで、私は、この受任通知を送った。しかし、この商工ローンの担当者はこれを無視し、「弁護士抜きで話しをさせろ。」と直接に交渉を行い、いろいろとやってくれた。
 依頼者は、私に対する信頼を失いかけた。担当者の態度も悪く、私はぶちぎれた。そして、訴訟が提起された。恥ずかしながら、私には、人権とか社会正義とかに対する特別「アツイ」思いはない。それでも、たまには、燃える。
 判決はこうなった。「多重債務者問題が、社会問題となっていることは周知の事実である。このような多重債務者はもとより、一般に債務者は、自己の債務の整理を弁護士に依頼することができ、これは債務者が経済的更生をはかるために必要な行為であって、債務者の法的権利である。一方、これを受任した弁護士は、債務者に対し受任通知を出し、以後の交渉を弁護士が行うことを連絡し、債務の内容についての回答及び資料の開示を求め、債務者の弁済計画を作成し、これを元に債務者と交渉するのが一般的手法であり、これは債務整理を受任した弁護士の当然の職務であり、依頼者に対する法律上の義務でもある。また、弁護士の職責(基本的人権の擁護と社会正義の実現)に照らし、これらの活動が一般に多重債務者の経済的窮状を解決して法的な安定と法秩序の回復をはかろうとする弁護士としての基本的職務であることは当然である。
 そうとすると、本件直接交渉は、債務者から債務整理を受任した弁護士の上記のような職責を事実上不可能にするものであり、弁護士活動を妨害するものであることは明らかである」。
 認められた慰謝料は80万円。高いとか安いとかではない。
 私は、慰謝料が金銭に見積もられること(それでも、金銭に見積もるよりないこと)の虚しさを初めて身をもって知った。依頼会社は、法人税対策の必要に迫られるほどの財務状況を取り戻した。
 80万円の賠償金の他、得られた救いはそれだけだ。

なお、この判決は、この問題以外に、貸金業者による取引経過の不開示を違法と断じており、法律実務家にとってはこちらの判断の方が重要と思われるが、この問題についての論考は別の機会に譲りたい。
(2001.9.14)
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