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to be a Rock and not to Roll 宮本 督
The Best Is Yet To Come(最良の時はこれから)
 ドイツのヘビーメタルバンド、スコーピオンズをご存知だろうか。70年代にデビューして40年に近いキャリアを誇るバンドだが、今年(2010年)4月に発表されたニューアルバム“Sting In The Tail”と現在のワールドツアーをもって解散することが既に発表されている。
 スコーピオンズを初めて見たのは、確か西武球場で開かれたボンジョビやホワイトスネイクとのジョイントコンサートで、私はまだ中学生だった(大きな声では言えないが、警備の緩かった時代のことで、入場券を買わずに潜り込んだことを思い出す。)。その後も、彼らの活動を折に触れて耳にする機会はあったものの、ヘビーメタルファン以外にも広く認知されるような決定的なヒット曲を持たないこともあって、日本のメディアで取りあげられる機会は少なく、私としても忘れがちな存在だった。
 しかし最近になって、行きつけのバーのマスターが、彼らのアコースティックで演奏されたライブアルバムを店で流してくれて、私は、彼らと久しぶりの「再会」を果たすことになった。最近といっても2002年。日韓共催のサッカーワールドカップ。小泉首相の北朝鮮訪問。みずほ銀行が生まれ、鈴木宗男が逮捕された、今となっては懐かしい年のことだ。
 その店にはよく通った。私の事務所から歩いて2分くらいの所にある地下のバーで、仕事を終えた午後11時過ぎに行き(当時は遅くまで働いていたのだ。)、深夜から時には明け方近くまでかけて、酒の力で仕事のストレスを押し流していた。
 しかし私のストレスや酩酊とは関係なく、スコーピオンズは、いつでも正確なリズムを刻み、美しいメロディーラインで、例えばある歌では、人生が短すぎると嘆き、またある歌では、彼らの祖国に築かれたブランデルグ門を境とする壁や、西ベルリンでの有名なケネディ演説(「私はベルリン市民である」)に触れ、さらに別の歌では、その壁の崩壊と自由社会のもたらす風について叫んでいた。彼らは東西冷戦の最中に青春を過ごしたドイツ人だが、常に、自らに特有の問題を、同時代のドイツ人固有の時代的・地域的問題としてではなく、より広範で普遍的な問題として描くことに腐心してきたように思える。ドイツやヨーロッパの外に活躍の場を求める中で、彼らの課題は、彼ら自身の時代的背景や地域性を、世界的な観点の中で捉え、彼らの語る物語を、時代や地域を越えたものに昇華していくことであった。
 彼ら自身が、その成果に充分に満足しているかは知らない。しかし、少なくとも、極東の島国で暮らす元ロック少年の私には、彼らの切実さだけは充分に感じられた。
 事務所からの帰り道。スコーピオンズのラストアルバムを聴きながら歩く。ミュージシャンとして最晩年に至り、それでも、まだまだ、新しい音楽を産み出すエネルギーに充ち満ちていることに驚かされ、敬意を払わずにはいられない。
 隅田川を渡る風の中、最後のアルバムの最後の曲、“The Best Is Yet To Come”(最良の時はこれから)と繰り返すバラードが胸を打つ。この曲で、スコーピオンズは40年に及ぶ活動に終止符を打つことになった。しかし、なんて皮肉なタイトルだろう。
 The Best Is Yet To Come”(最良の時はこれから)。やがてリフレインは、バスドラムとヴォーカルだけとなり、フッとすべてが終わる最後の瞬間、大きな喪失感が私を襲った。
(2010.8.30)
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