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NAKASHIMA MIYAMOTO ATOORNEYS AT LAW
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to be a Rock and not to Roll 宮本 督
業界標準のお話し

 たまには仕事絡みの話しを。
 以前、私が顧問をさせてもらっている会社の売掛金の回収を巡って交渉をしていた最中、相手方の弁護士から、「会社が倒産してしまった、近々、破産申立をする予定」という連絡をもらったことがあった。こちらの売掛金は、その後、保証人から大部分を回収できたので、この件のことは忘れていたのだが、その倒産の連絡から約1年後、ようやく裁判所に破産申立がされ、その破産手続が進むにつれ、実は、事業を別の会社に移管していて、それだけでなく、不動産の名義も変えられて、資金も在庫もいつの間にか消えてなくなっていたらしいことが明らかになってきた。破産管財人は、事業の移管先の別会社や、役員達の責任を追及したものの回収が進まず、ついには、破産の申立をしたその弁護士さんに損害賠償を求める裁判を起こしたらしい。
 このような裁判は、業界では極めて珍しいのだけど、実は前例もある。
 東京地方裁判所の平成21年2月13日の判決がそれ。訴えられたのは、若手ながらテレビ出演等で有名な弁護士さんだった。債権者に対して弁護士が破産申立を受任した旨を通知した後、2年間、申立をしない間に、財産が散逸してしまったという案件で、判決は、この若手弁護士さんの責任を認めて約500万円の損害賠償の支払を命じた。曰く、破産手続は、債務者の財産について平等な配当を行うための手続で、その目的のために、倒産会社は、その財産を保全することが求められるから、倒産会社から破産申立の依頼を受けた弁護士も、破産管財人に引き継がれるまで、財産が散逸することのないよう措置しなければならない法律上の義務を負う、って。
 でもね。この判決は、間違ってる。
 破産申立の代理人になる弁護士にとっての依頼者は、当たり前だけど、倒産会社であって、債権者じゃない。弁護士は、依頼者のために活動するのが少なくとも第一義で、依頼者以外の者の利益を考えて行動しなければならないなんてことはない。それに、弁護士が依頼を受けたという通知がされた場合でも、債権者としては、別に何も困ることはない(倒産するのは困るかも知れないけど、弁護士さんが付いたことそれ自体で困ることはない)。実際に破産手続に入らない限り、債権者は、裁判を起こしたりすることも、財産に強制執行することだってできるし、自ら破産の申立をすることだってできるわけだから(破産って、自分で申立をする「自己破産」が一般的だけど、債権者だって申立をすることができる。)。この弁護士さんが、自ら、会社の財産をどこかに持って行ったとかいうなら話は別だけど、真犯人は、この倒産した会社(の役員たち)なわけで、債権者としては、そういう事態を防ぎたいなら、他人(倒産会社)が頼んだ弁護士任せにしないで、自前の弁護士を用意して法的手続を採ればよかっただけのことだ。
 ただ、判決書には両者の言い分が載っているんだけど、この負けちゃった若手弁護士さんの方は、上のような理屈には全然気付いていなかったみたいで、そういう主張はしていない。判決というのは、裁判官が、原告の言い分と被告の言い分を見比べた上で判断するわけで、そうすると、こういう間違った判決が出るとしても、やむを得ない面はある。それに、判決が間違っているとは言っても、別に、この若手弁護士さんの仕事が正しいわけではなく、(判決書を見る限りだと)ほとんど何の仕事もせず、その間に、倒産した会社の預金もなくなってしまい、倒産した後に何故か売掛の入金もされ、しかもそのお金もどこかに行っちゃったみたいで、ハッキリ言ってメチャクチャ。要するに、もともと引き受けた仕事は放置した上で、その後、訴えられた後のディフェンスは超低レベルという悲しい事態なわけで、これなら、500万円くらい弁償したって、罰は当たらないのかも知れない。って、こんな雑感も弁護士としてはメチャクチャなわけだけど、最近の法律家の業界標準に合わせるとしたら、こんな程度で丁度いいだろう。
 さて、仕事しよ。
 業界標準になんて合わせている場合じゃないんだよね。

(2013.3.6)
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