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弁護士 宮本 督

エッセイ:
to be a Rock and not to Roll

2015.07.31

英語の壁

 大学受験の後、英語に触れる機会はほぼゼロだったのだが、30代半ばくらいから、英語のペーパーバックを読んだり、NHKラジオの英会話番組を聴いたりして、なんとなく英語の勉強を再開していた。でも、海外在住経験も留学経験もないし、どうしても仕事で使ったりできるようなレベルには程遠く、たまに英語(に限らないけど)を使わなくてはならない仕事がある場合は、いつも通訳や翻訳はプロに頼ってきた。
 しかし、先日、降ってわいたような超特急案件で、海外の会社が、日本の企業を買収する案件を担当しなくてはならなくなって(私は、その海外の買い手側の代理人)、適切な通訳の手配も間に合わない状況が生じ、仕方なく、自分自身で、英語でのコミュニケーションをすることを余儀なくされた。
 多くの人が指摘していることだけど、やっぱり、英語を読んだり聴いたりすることより、書いたり話したりすることの方が、圧倒的に難しくて、高い壁を感じる。もちろん、「英語で考える」なんてことは、とうてい不可能な芸当だ。しかし、コトは私の英語学習なんて気楽なものではなく、リアルな会社の買収なわけで、案件の性質上、当然、それなりに巨額の取引で、通常の(日本語の)業務だとしても、ミスや見落としが許されない仕事であることに加え、きちんと意思疎通ができるのか心許ない状況で、毎日、気が重かったのだが、上手な英語を話したり書いたりすることは端から諦めて、冗長でも下手でも、とにかく正確に情報を伝えるよう心掛けてみた。eメールを一本書くだけで、日本語で書くのと比べて何倍もの時間がかかるし、言葉の問題だけじゃなくて、商習慣や法律の違いなんかもあって、クライアントへの説明には気を遣うし、明らかに自分の能力を超える仕事をしていると思い、ユウウツな日々なのだが、それでも、クライアントも、私の一生懸命さは理解してくれていると思うし、つたない英語も我慢してくれている。
 無事に取引が成立するかは、もう少しだけ時間がかかりそうだけど、さっき、自分で書いた数十通のeメールを読み返してみると、初めの頃に書いたものと比べれば、長足に進歩していると感じられて(誰も言ってくれないから自分で言おう)、改めて当初の低レベルさに赤面するとともに、40代も半ばを迎えた自分の中に、まだまだ能力を伸ばせる対象があることに素直に驚いた。
 実は、このエッセイも、英語のドキュメントを見るのがイヤになって、現実逃避的に書き始めたのだが、やっぱり仕事に戻らないといけない。
 気が進まないけど、少しはいいこともある。それは、私の海外クライアントには、日本語で書かれたこのエッセイが読まれないことだ。

宮本の本棚から

「ぼくは愛を証明しようと思う。」 藤沢数希 著

 モテない男が、メンターを得て、「恋愛工学」を身につけ、いろいろな女と「ヤレる」ようになる成長譚。あちこちで酷評されているのを目にして、是非読んでみたいと思った次第。
 指摘される指南の内容に特に目新しいことはないように思うし、ビジネスの分野でも、例えば、マーケティングや企業間交渉とかについて、似たようなことの書かれたマニュアル本は沢山あるよね(きっと)。本書が目を引くのは、そのあからさまな正直さだ。つまり、若い男なんて、数多くの女とヤルってことだけにしか興味がないなんて、そんな本当のことを堂々と大前提にしているってところが、本書の唯一の見どころか。
 女性読者がブーイングをする気持ちは分からなくはないけど、所詮は子供向けのジョークなわけで、そんなに目くじらを立てなくてもいいんじゃないの、なんて思った。
 それより、村上春樹バリの比喩の多用が目について、いちいち鼻白む。ついでに、一人称は「僕」で、主人公は「渡辺」、指南役は「永沢」で、最愛の女性は「直子」と、「ノルウェイの森」のあからさまな本歌取りも、寒い笑いを誘ってくれた。相手は「100%の恋愛小説」なわけで、こういうのも著者なりのジョークなんだろう。