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ゴルフ場問題Q&A
(「ゴルフ会員権法律相談」ゴルフワールド)

弁護士 宮本 督

Q11 年会費の滞納による預託金没収

当ゴルフ場では、間もなく、預託金の据置期間が満了してしまいます。当ゴルフ場の会則には、年会費の滞納が長期にわたる会員は、ゴルフクラブから除名でき、預託金返還請求権を没収できるとの規定があるのですが、この規定に基づき、一部会員の預託金を没収して、返還しなければならない預託金を少しでも減らしたいと思うのですがどうでしょうか。

A

 ゴルフ場の会則は、ゴルフ場と会員との契約書にあたるものとされていますので、契約にしたがったものとの主張が認められれば、このような措置も可能ということになります。
 しかし、公の秩序や善良な風俗(公序良俗)に反する契約は無効とされていて(民法九十条)、せいぜい十数万円程度の年会費の未払で、数百万円から数千万円の預託金を没収することは、「暴利行為」として公序良俗に反すると解釈することには、ほぼ異論がないだろうと思われます。したがって、没収は許されず、預託金は返還しなければならないということになります。
 ただ、問題はこれに止まりません。年会費の未払によってゴルフクラブから除名すること(会員契約の解除)は、有効と判断される可能性があります。そして、会則の他の内容にもよりますが、除名したことで据置期間満了前であるにもかかわらず預託金を返還しなければならないという事態になってしまうこともあり得るのです(つまり、除名は有効だが、没収は無効とされる可能性があるということです。)。
 そうすると、預託金の償還対策として行ったことが、かえって、預託金の早期返還義務につながりかねないことになりますので、充分注意して下さい。