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派遣労働者活用の勧め 続発する労使紛争と企業の対策
続発する労使紛争と企業の対策
近代中小企業 02.7
弁護士 宮本 督
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律
 以上のように個別労使紛争の急増と、個別労使紛争のための解決制度が充分に機能していない状況を踏まえ、紛争の実情に即した迅速な解決を図るため、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が、昨年(平成一三年)一〇月から施行され、[1]都道府県労働局長の助言・指導制度、[2]紛争調整委員会によるあっせん制度が整備されました。
 まず、この法律が対象としている事案は、配置転換、転籍出向、在籍出向、解雇の有効性、就業規則の変更に伴う労働条件の変更、企業経営上の必要性による解雇(いわゆる整理解雇)、雇止め、募集・採用、職場におけるセクシュアルハラスメント等々、極めて広汎にわたっていて、個別労使紛争すべてについて及ぶといってよいでしょう。しかしながら、i労働関係調整法六条に規定される労働争議や、ii男女雇用機会均等法一二条に規定される紛争(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の措置で厚生労働省令で定めるもの)等々、その対象外とされている紛争もあります。これらが対象から除外されているのは、iについては、その性質上、いわゆる集団的労使紛争と分類されるもので、労働関係調整法等に基づき解決されるべきものであるため、iiについては、男女雇用機会均等法一四条において既に調停制度が準備されているためです。

1 助言・指導
 まず、この法律が用意するのは、都道府県労働局長による、助言及び指導です。

法第4条 1 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争(労働関係調整法(昭和21年法律第25号)第6条に規定する労働争議に当たる紛争及び国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律(昭和23年法律第257号)第26条第1項に規定する紛争を除く。)に関し、当該個別労働関係紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができる。
2 都道府県労働局長は、前項に規定する助言又は指導をするため必要があると認めるときは、広く産業社会の実情に通じ、かつ、労働問題に関し専門的知識を有する者の意見を聴くものとする。
3 事業主は、労働者が第1項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 労使紛争が生じたとき、当事者(の双方または一方)は、都道府県労働局長に対して解決についての援助を求めることができ、この場合、都道府県労働局長は、事実関係を調査した上で、場合によっては裁判例や実務等に詳しい専門家からの意見を聞いた上で、紛争当事者に対し、問題点を指摘し、解決の方向性を示唆することができるとされています。なお、助言は口頭または文書で行われ、指導は、問題点を指摘した上で解決の方向性を文書で示すこととされています。
 当然のことながら、助言・指導は、強制力を伴うものではありません。したがって、労働者が求めた援助に対し、都道府県労働局長が、企業に対し、この助言・指導を行った場合も、これに従う義務はなく、従わないことによる制裁等もありません。
 ただ、企業としては、次の二点に留意する必要があります。
 まず第一点は、この助言・指導と、いわゆる行政指導の区別です。法律違反の行為については、法令等に基づき指導権限をもつ行政機関によって行政指導がされることがありますが、個別労使紛争には法律違反事項を含む紛争もあり、その場合、この助言・指導の他、または、この助言・指導に先立って、行政指導が行われることもあり得ます。もとより、行政指導も、何らの強制力を持つものではありませんが、指導内容が法律違反を指摘するものであるだけに、真摯に受け止めた上で検討を行う必要があるといえるでしょう。
 次に、労働者が都道府県労働局長に対し紛争解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いが禁止されていることです。ここで、「不利益な取扱い」とは、解雇を始めとして、降格、減給、昇給停止、出勤停止、雇用契約の更新拒否等がこれにあたります。なお、配置転換が不利益な取扱いに該当するかについては、給与その他の労働条件、職務内容、職制上の地位、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について、旧勤務と新勤務とを総合的に比較考量の上で判断されることになります。

2 あっせん
 個別労働関係紛争解決促進法では、紛争調整委員会によるあっせん制度も用意されています。

法第5条 1 都道府県労働局長は、前条第1項に規定する個別労働関係紛争(労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)について、当該個別労働関係紛争の当事者(以下「紛争当事者」という。)の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において当該個別労働関係紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。
2 前条第3項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。

 個別労使紛争は、雇用関係という継続的な関係を前提としていることが多く、円満な解決をはかる必要性が高いといえます。紛争が解決したにもかかわらず、労働者が職場に居づらくなり、退職を余儀なくされては本末転倒です。そこで、この法律は、紛争当事者間の話し合いによる自主的な解決の促進に重点を置くあっせん制度を設けることにしたとされています(※)。
 紛争調整委員会によるあっせんの具体的な流れは、次のとおりです。

[1] 紛争当事者が、都道府県労働局長に対し、あっせんの申請を行う。
[2] 都道府県労働局長は、あっせんを行うことが不適当な場合(既に訴訟が係属しているような場合)以外、紛争調整委員会にあっせんを委任する。
[3] あっせんの委任がされた場合、紛争調整委員会長は、事案ごとに担当するあっせん委員を三人指名する。
[4] あっせん委員は、当事者双方から事情を聴取し、双方の主張の要点を確かめ、当事者の話し合いによる自主的な解決を促す。
[5] あっせん委員は、当事者からの申立があり、必要があると認める場合には、関係労使からの意見を聴取する。さらに、両当事者が求める場合に、事件の解決に必要なあっせん案を作成し、これを両当事者に提示する。両当事者がこれを受諾した場合には、あっせんは終了する。
[6] 当事者から手続への不参加や手続の打ち切りについての意思表示がされた場合など、これ以上あっせん手続を継続してもあっせんによっては紛争の解決の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち切る。

 あっせんは、紛争当事者からのあっせんの申請によって始まります。申請は、紛争当事者である労働者及び事業主の双方、労働者または事業主の一方のいずれからも可能です。なお、労働者があっせんの申請をした場合に、その労働者に対する不利益な取扱いが禁止されているのは、先述した紛争解決の援助を求められた場合と同様です。
 あっせんの申請を受けた都道府県労働局長は、あっせんを行うことが不適当な場合(既に訴訟が係属しているような場合)以外、紛争調整委員会にあっせんを委任することになります。なお、あっせん制度はあくまでも紛争当事者が任意に参加する制度で、参加を強請されるものではありません。そのため、一方の申請により手続が開始されても、他方の当事者がどうしても参加を拒否する場合には、後述するとおり、手続が打ち切られることになります。

 第三者による紛争解決の方法としては、あっせん、調停及び仲裁等が一般的で、主として集団的労使紛争に対して適用される労働関係調整法は、これらを用意しています。
 このうち、まず、仲裁は、紛争当事者が、仲裁判断に従うことを約束した上で手続に入るもので、したがって、当事者は、仲裁結果に拘束されることになります。この意味で、仲裁は、裁判に似た制度といえるでしょう。
 これに対して、あっせんと調停は、当事者間の合意の形成を促進することを目的とする調整型の紛争解決制度といえ、当事者が、その結果に任意に従うことにより成り立つものです。なお、調停は、調停委員のイニシアティブによって進められ、事情聴取の結果等に基づいて調停委員が作成した調停案を両紛争当事者に受諾させることに重点が置かれるものですが、これに対し、あっせんは、あっせん委員が当事者の間に立って、当事者の話し合いの促進を図ることに重点が置かれます。

 あっせんは、紛争当事者からのあっせんの申請によって始まります。申請は、紛争当事者である労働者及び事業主の双方、労働者または事業主の一方のいずれからも可能です。なお、労働者があっせんの申請をした場合に、その労働者に対する不利益な取扱いが禁止されているのは、先述した紛争解決の援助を求められた場合と同様です。
 あっせんの申請を受けた都道府県労働局長は、あっせんを行うことが不適当な場合(既に訴訟が係属しているような場合)以外、紛争調整委員会にあっせんを委任することになります。なお、あっせん制度はあくまでも紛争当事者が任意に参加する制度で、参加を強請されるものではありません。そのため、一方の申請により手続が開始されても、他方の当事者がどうしても参加を拒否する場合には、後述するとおり、手続が打ち切られることになります。

法第12条 1 委員会によるあっせんは、委員のうちから会長が事件ごとに指名する三人のあっせん委員によって行う。
2 あっせん委員は、紛争当事者間をあっせんし、双方の主張の要点を確かめ、実情に即して事件が解決されるように努めなければならない。
法第13条 1 あっせん委員は、紛争当事者から意見を聴取するほか、必要に応じ、参考人から意見を聴取し、又はこれらの者から意見書の提出を求め、事件の解決に必要なあっせん案を作成し、これを紛争当事者に提示することができる。
2 前項のあっせん案の作成は、あっせん委員の全員一致をもって行うものとする。
法第14条  あっせん委員は、紛争当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者から当該事件につき意見を聴くものとする。
法第15条  あっせん委員は、あっせんに係る紛争について、あっせんによっては紛争の解決の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち切ることができる。

 あっせんは、あっせん委員が紛争当事者間の話し合いを促進することにより、紛争の解決を促進するための制度ですから、あっせん期日においては、あっせん委員は、紛争当事者の間に入り、双方の主張の要点を確かめ、必要に応じ参考人から意見を聴取する等の方法により事実の調査を行った上で、紛争当事者間の話し合いを促し、その間を仲介して、紛争当事者の双方または一方に対して譲歩を求めたり、具体的な解決の方策を打診する等、両当事者間を取り持ついわば潤滑剤の役割を果たすことになります。
 また、事案によって、紛争当事者双方に、解決したいという希望はあっても、具体的な解決方法がわからずに話し合いが進まないという場合等には、あっせん委員が具体的な解決案をあっせん案として提示することも考案されています。なお、あっせんは、紛争当事者のプライバシーを保護するため、手続は非公開とされています。
 ただし、あっせんは紛争当事者の任意の合意に基礎をおくもので、あっせん案に拘束されることがないことはもとより、そもそも、事実の調査もあっせん期日への出席についても強請されるものではありません。また、あっせんを主宰する紛争調整委員会の調査・勧告権限が必ずしも充分とはいえず、使用者と労働者間の対立が激しく双方に譲り合いの余地がないような事案や、当事者のいずれかが紛争解決に著しく非協力的な事案などにおいては、これらの制度の実効性が認められにくいとの問題性が指摘されています。
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