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派遣労働者活用の勧め 続発する労使紛争と企業の対策
改正労基法・労働者派遣法の内容と影響度を探る(企業実務 8月号より)
企業実務 8月号
弁護士 宮本 督  弁護士 溝口 哲史
 企業が従業員を解雇する際の基準となる「解雇ルール」を初めて法制化することなどを柱とした労働基準法改正案が6月27日の参議院本会議で可決成立し、半年以内に施行されることになりました。
 また、派遣労働者の派遣期間の上限を1年から最長3年に延長し、製造業でも条件付で解禁することを柱とする労働者派遣法改正案も6月5日の参議院本会議で可決成立し、9ヶ月以内に施行されることになっています。
 労働組合が「労働法制の改悪」として猛反発したこれらの改正の内容及び今後予想される運用、問題点につき解説します。
1.労働基準法
(1)  改正の主なポイントは、[1]有期労働契約の期間の上限を現行の1年から原則3年へ延長、[2]専門業務型裁量労働制における健康配慮措置の定め、裁量労働制の導入、運用等にかかる手続の緩和及び対象事業場の拡大、そして、[3]解雇ルールの明文化の3点です。
(2)  [1]について
 現行法では、アルバイト、契約社員等のいわゆる期間雇用労働者については、期間の上限が原則1年と定められていました。
 しかしながら、企業において機動的な事業運営のために専門的技能を有する者を一定期間確保するために、いわゆる中期雇用とでもいうべき雇用形態など、多種多様な雇用形態の必要性が大きくなり、最長期間1年の撤廃や緩和の主張が高まってきました。
 なお、現行法においても、(ア)新商品等の開発または科学に関する研究に必要な高度の専門的知識を有する労働者が不足している場合、(イ)事業の開始、転換、拡大、縮小または廃止のための業務であって一定の期間内に完了することが予定されているものに必要な高度の専門的知識・技術・経験を有する労働者が不足している場合、(ウ)満60歳以上の労働者を雇い入れる場合の3つの場合には、例外的に3年という上限が設けられています。
 しかしながら、企業の上記要請に伴い、雇用期間の上限を原則3年とし、(a)高度の専門的知識を有する労働者が必要な場合、(b)満60歳以上の労働者を雇い入れる場合に5年とする旨の改正がなされるに至ったのです。
 この点、労働組合からは、企業が新卒者を「3年契約」の有期雇用として雇い、不要と判断すれば「雇い止め」を行うなど、事実上の若年定年制を採用するものであるとして、強い反発がありました。
 また、民主党などからは、労働者から転職の機会や職業選択の自由を奪うものであるなどという反対意見が出されました。
 これらを受けて、今回の改正法においては、上限が3年となる有期労働契約を締結した労働者については、当該労働者の申し出により、契約期間の初日から1年経過後いつでも退職できること、法改正から3年後に再検討することが、附則に盛り込まれることになりました。
 なお、この改正法による企業側の対応としては、従来の原則1年では不可能であった人材育成のための研修制度等の整備などが必要になると考えられます。
(3)  [2]について
 従来、いわゆる専門業務型裁量労働制(一定の専門的・裁量的業務に従事する労働者について、事業場の労使協定により、実際の労働時間数にかかわらず一定の労働時間数だけ労働したものとみなす制度)」については、後述する企画業務型裁量労働制と異なり、健康配慮措置の定めがなかったことから、裁量労働制の採用が労働者の働き過ぎにつながることが多く、大きな社会問題となっていました。
 そこで、改正法においては、専門業務型裁量労働制についても、労働者の健康及び福祉を確保するための措置及び苦情の処理に関する措置の導入を労使協定により定めることが義務付けられました。
 また、企画業務型裁量労働制(事業運営に関する企画、立案、調査、分析の業務を対象とするもので、いわゆるホワイトカラーにおける裁量労働制)については、専門業務型裁量労働制と異なり、その採用にあたっては労使委員会の全員一致の決議が必要とされるなど要件が厳しく、裁量労働制の導入が困難な点が問題とされていました。
 そこで、改正法では、(i)労使委員会の決議要件を委員の5分の4以上の多数とし、(ii)労使委員会の委員のうち、労働者を代表する委員について、当該事業場の労働者の過半数の信任を得ていることとする要件が廃止され、(iii)労使委員会の設置にかかる行政官庁に対する届出も廃止されています。
 さらに、対象事業場も「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」に限定されなくなるなど、企画業務型裁量労働制の導入要件、手続が従来より簡素化されることになりました。
 この企画業務型裁量労働制に関する改正については、労働組合などから、ホワイトカラー全員に裁量労働制を拡大することにより、1日8時間労働の原則が事実上崩され、いわゆる「サービス残業」が合法化されるものであるとの批判がなされています。
 この点、裁量労働制の適用には労働者本人の同意が必要であり、対象業務の具体的範囲も定められることから、裁量労働制の導入要件の緩和が直ちにサービス残業の増加につながるとは考えにくいと思われます。
 しかしながら、サービス残業についての逮捕者まで出ている状況ですから、企業においては、労使委員会の適正な設置、運営はもちろんのこと、労働者の健康確保措置(出退勤時刻のチェック、労働者の健康状態の把握、年次有給休暇の取得促進など)を徹底するなど、より一層の注意が必要です。
(4)  [3]について
 この点は、今回の改正法において、最も熱い議論が交わされたところです。
 従来、期間の定めのない労働契約について、民法は企業及び労働者の双方がいつでも解約を申し入れることができる旨規定し、労働基準法も労災や産前産後の休業期間中を除き、解雇を制限する旨の規定を置いていませんでした(但し、経営者が少なくとも30日前に解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが必要です。)。
 しかしながら、最高裁判所がその判決において「(解雇が)客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」といういわゆる「解雇ルール」を採用して以降、その後の裁判においてもこのルールが適用され続け、その結果、企業による労働者の解雇が解雇権濫用に当たらないことを企業側で立証しなければならないという考え方が確立していました。
 それを受けて、今回の改正法においては、上記「解雇ルール」が明文化されることになったのです。
 具体的には、
 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
 という文言で、最高裁判所の判例と同じ内容となっています。
 この点、当初の政府改正案においては、上記文言の前段として、「使用者は労働者を解雇できる」と明定し、濫用による解雇の無効を例外として位置づけるかのような規定になっていました。
 そのため野党や労働組合などが、政府改正案について、解雇自由の原則を定めるものであり、企業の自由なリストラを誘発しかねないとして、激しく反発しました。
 その結果、上記のような文言となったのですが、これによっても条文の構造上、労働者側に企業の解雇権濫用についての主張・立証責任が負わされるかのように解釈できるなどとして、明文化そのものに反対する労働組合も数多くありました。
 そこで、今後、この「解雇ルール」は、裁判上どのように運用されていくのかが問題となりますが、改正法は従前の最高裁判例をそのまま明文化したものですから、裁判所も立法者意思を尊重するものと思われ、労働組合の心配するようなことにはならないと考えられます。
 つまり、裁判所では、従来どおり、労働者側において、当該解雇には正当な理由がなく、権利濫用で無効である旨主張しさえすれば、企業側において、解雇事由に該当する客観的事実を指摘したうえで、その解雇が「客観的かつ合理的な理由」と、それを理由に解雇する「社会通念上の相当性」の証明がなされない限り、当該解雇が無効とされるということです。
 したがって、今後、企業において労働者を解雇する必要が生じた場合であっても、従来どおりの運用をすれば足りるものと思われます。
2.労働者派遣法
(1)  今回の労働者派遣法の改正点は、[1]いわゆる26業務以外の派遣期間の上限を1年から3年に延長、[2]派遣期間が最長3年となっている26業務については、その制限を撤廃、[3]労働者派遣事業の拡大(製造業への派遣、医師・看護師等の派遣)、[4]派遣先による派遣労働者の直接雇用責任の強化、[5]紹介予定派遣については、派遣就業前の面接・履歴書送付が可能となる、というのが主なところです。
 これらの改正は、派遣期間が1年では仕事を覚えたころに期間が経過してしまうことなどから、派遣法における規制緩和をすべきという企業側の要請に基づくものですが、これに対しては、労働組合などから、企業にとって雇用関係を結ばずに必要とする労働サービスを確保できることになり、ひいては全ての業務が派遣という仕組みに置き換わってしまいかねず、労働者の労働環境がさらに劣悪になるなどという批判がなされています。
 しかしながら、上記[4]や[5]のように、派遣先企業における派遣労働者の正式雇用の可能性が広がっていること、そして、派遣期間経過後は派遣先の直接雇用努力義務を回避するために、派遣元及び派遣先が当該業務を業務委託や、当該派遣労働者を個人事業主に切り替えるなどしていたことなどに鑑みると、一概にその批判は当たらないものと考えられます。
 さらに、派遣期間が長くなればなるほど、実態として派遣先企業と派遣労働者との間に雇用関係が発生しているとみなされる可能性が高くなります。
 このように、派遣先企業においても使用者責任を負わなければならないリスクが出てくるわけですから、今回の改正法は、逆に派遣先企業にとっても注意が必要であると考えられます。
(2)  [1]sについて
 派遣先企業は、1年を超える派遣期間を設定する場合には、その事業所の過半数を代表する労働者等にその旨通知し、意見を聴いたうえで定めることになりました。
 これは、派遣先の事業主が、現場の実情等を的確に把握した上で派遣期間を定めるべきという要請から設けられた規定です。
 但し、これは意見聴取の機会を与えるというもので、労働者の過半数代表の賛成が必要というわけではありませんので、その点注意が必要です。
(3)  [2]について
 従来、いわゆる26業種については、最長3年となっている期間制限が撤廃されました。
 これにより、派遣先企業における派遣労働者の利用拡大などのメリットがある一方、前述の派遣先企業における使用者責任発生のリスクや、上記[4]の義務の負担があることに注意が必要です。
(4)  [3]について
 今回の改正法においては、従来労働組合からの反対が強いため派遣が禁止されていた製造業について、労働者の派遣が解禁されました。但し、この改正法施行後3年間は、派遣期間の上限を1年とし、それ以後は最長3年まで派遣可能にすることになっています。
(5)  [4]について
 (ア)派遣先が派遣期間の制限を超えて派遣労働者を使用しようとし、かつ、当該派遣労働者が派遣先に雇用されることを希望する場合、(イ)派遣期間に制限がない業務に3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている派遣先が、その業務に労働者を雇い入れようとする場合、の2つの場合には、派遣先は当該派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければならない義務を負担することになりました。
 これにより、派遣先企業にとっては、派遣労働の利用に当たっての期間制限をより厳格に遵守すべきことになったと考えられます。
(6)  [5]について
 紹介予定派遣とは、労働者派遣のうち、派遣元事業主が労働者派遣の開始前または開始後に、派遣労働者及び派遣先について、許可を受けまたは届出をして職業紹介を行い、または行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、派遣労働者が派遣先に雇用される旨が、労働者派遣の終了前に派遣労働者と派遣先との間で約されるものを含むものをいいます。
 これにより、従来行うことができなかった派遣就業前の派遣労働者との面接、履歴書の送付が可能となり、正社員の雇用を考える派遣先企業にとっては、より使い勝手の良いものとなりました。
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