中島・宮本・溝口法律事務所
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NAKASHIMA MIYAMOTO ATOORNEYS AT LAW
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企業のための民事再生の法律相談
経営再建をあきらめる前に
弁護士 宮本 督
1 再建できるかの見極め
 このままで駄目なことはわかっても、とにかく重要なことは、アナタは、会社をどうしたいのか、再建したいと思っても、再建できるのかを見極めることだ。
 客観的には、誰が見ても再建は無理なのに、再建のための道を突っ走ろうとしても、頓挫することは目に見えている。頓挫するだけならいいが、手続費用を無駄にし、債権者への配当率を下げることになる。倒産手続はドタバタし、アナタの信用はボロボロになる。どうせ倒産するなら、信用は失うことに変わりはないともいえるが、初めから清算手続を目指した場合に比べ、信用の失墜度は段違いだ。
2 ポイントチェック
 アナタの会社は再建できるか。その見極めのためのポイントを挙げてみた。比較的重要なポイントから順に並べている。アナタの会社にあてはめてもらいたい。
 なお、後にも説明するが、以下のポイントは、そのすべてがOKでないと再建が不可能というわけではない。ただ、多くの条件が整う方が再建には有利であることは間違いない。

ポイント1 経営者の事業継続能力
 任意整理の方法による場合はもとより、民事再生手続においても、従前の経営者が経営を続けることになるのが通例である(※)。
 したがって、経営者の事業継続意欲、要するに社長のやる気がないとどうにもならないし、高齢で後継者がいないというような場合も、再建が難しいのが実際である。

※ 民事再生手続は、原則として、債務者自身(従来の経営陣)が引き続き事業を継続しながら、主体的に債権者に対する弁済計画やリストラの方法を定めた倒産処理計画案を作成し、債権者の多数決による承認を得て、承認された計画に従って再建を図るものである。ただ、民事再生手続では、経営陣(役員)としての従来の地位が必ず保証されるわけではなく、業務執行に極めて大きな問題があったり、著しく不公正な行為を行ったりしていた場合には、地位を剥奪される可能性もある。また、スポンサーの協力を得て再建する場合、スポンサーサイドが経営の実権を握るのが通例である。

ポイント2 資金繰
 2ヶ月分(できれば3ヶ月分)の運転資金は確保しておきたい。民事再生の申立後は手形割引や融資が困難となるのに、仕入代金等、取引先に対する支払は現金払いが原則で、人件費の他、電気・ガス・水道・公租公課も現金で支出せざるを得ないため資金繰が逼迫することは避けられないからだ。
 経営が行き詰まった段階で、担保化されていない商品や売掛金が、ほとんど処分、回収がされていて、流動資産が少ない場合は、申立後の資金繰りの見とおしが付かなくなり、再生を諦めざるを得ない場合もある。

ポイント3 収益性
 事業がもうからないと再建できない。というか、収益性がない事業であったり、どれだけリストラをしても近い将来において収益性を持たせる見とおしも立てられないのであれば、商売そのものを止めてしまった方がいい。冷淡ないい方で恐縮だが、努力しても赤字を垂れ流すだけなら、家で寝ていた方がいいのである。経営者にとってもそうだし、社会にとってもそうだ。
 それに、再建するといっても、過去の負債の一定割合の支払をしなければならない以上、余剰資金がないと、この支払ができないことになる。
 収益性とは、端的にいえば営業黒字だ。
 会社の決算書を見て欲しい。損益計算書の方だ。上から、売上高と売上原価が記載され、売上利益が計上されている。これが、いわゆる「粗利」と呼ばれるものだ。販売業者なら、売上の総額から仕入の総額を差し引いたもので、要するに、100円で仕入れて150円で売ると、50円の粗利が出る。1年間のすべての売上と仕入を足し挙げたものが、売上高と売上原価にあたる。
 売上収支欄の下に、販売費及び一般管理費等が記載されていると思う。「販管費」といわれるが、人件費や家賃等、事業をするに不可欠な出費を示す。売上利益からこの販管費を差し引いたものが、営業収支である。
 このさらに下には、営業外の利益と費用が記載される。本業以外の収入と経費のことで、営業外利益には受取利息や雑収入が、営業外費用には支払利息や割引料が、それぞれ含まれる。営業収支にこれらを加減すると、経常収支が計算される。
 ついでに説明しておくと、これら以外の要因によるプラスとマイナスが、特別利益と特別損失と呼ばれ、経常収支にこれらを加減したものが当期収支で、これがプラスなら当期は黒字、これがマイナスなら当期は赤字となる。
 小難しい話しはここまでで、注目すべきは、営業収支の欄だ。ここを見れば、本業が儲かっているのか、いないのかが判明することになる。営業収支レベルで黒字の企業なら取りあえず有資格だ。ただし、そうでなくても、損益計算書の次に販管費の内訳書が添付されていると思う。その中に、減価償却費というのがあれば、その金額と、営業赤字の額を比べてみてもらいたい。減価償却費の数字の方が大きければ見込みがあるが、減価償却費が計上されていないか、計上されていても営業赤字の額より小さければ、再建は望み薄か。減価償却費とは、資産の財産的価値の減少分のことで、実際に、会社からお金が出ていくわけではないが、資産が目減りすることに着目して、経理上、会社の経費とすることが認められているだけのものだ。そうすると、営業収支が赤字であっても、実際は、この減価償却費分は、支払をしていない以上、キャッシュフローに影響はないということとなり、本業が儲かっているといえなくはない状態にあることになる。
 これに対し、減価償却費分と営業赤字額を比較して、それでも、キャッシュフローが維持できないとなると、先行きは暗い。営業黒字化の見通しが立たないなら、会社がそのままの営業を継続する限り、再建は100%不可能といってよい。少なくとも不採算部門は切り離した上で、再生を図るよりない。

ポイント4 経営悪化の原因
 どうして倒産することになったのか。それによっては、経常黒字化が難しく、したがって、再建が困難となる。
 典型的には、本業の収益が上がらず、ジリ貧となって倒産に至る企業については再建が難しいことになる。負債をカットしても、結局、収益を上げられないのでは維持できない。
 これに対し、例えば、大口の不良債権の発生があって一時的な資金逼迫が生じた会社であるとか、本業の収益性は高いが本業以外の投資あるいは投機に失敗した会社、開発の先行投資が実を結ぶまでに資金繰りに窮してしまったが、画期的な新規商品開発が目前である会社、などの場合は、一般的に再生が容易であるといえる。

ポイント5 事業内容
 「事業内容」といっても、難しい話しではない。何をしている会社なのかということである。そして、業界全体が斜陽化しているような場合、再生は容易ではない。例えば、労働集約型産業などのように、業界全体が安価な労働力を求めて海外に生産拠点をシフトしつつあるとか、取扱商品がすでに陳腐化していて需要自体が減少傾向にある場合などでは、いくら債権者の協力があっても、収益性の改善が見込めず、再生計画の実行が結局不可能となる。また、商社的な業態で、アナタの会社にとって替わる業者がいくらでもあり、その会社が消滅しても、得意先や仕入先が困らない事業も、再生が困難である。このような場合、得意先は、商品供給が円滑にされるかどうかを心配しながらアナタの会社と取引するより、他から仕入れた方がよほど安心で、結果的に得意先が離散してしまうし、仕入先も再建中の会社の二次破綻を懸念して取引を躊躇するからである。
 これに対し、特殊部品の製造会社で、その企業が消滅してしまうと、ある商品の生産が困難になるなど、業界で不可欠とされている会社は再建可能性が高いといえる。

ポイント6 財務状況
 財務状況によって再建可能性が別れるのは、当然のことであろう。ここでは、ポイント2(資金繰)とポイント3(収益性)以外の点で、チェックが必要な点を挙げる。
(1) まず、再建した場合の債権者らに対する支払条件が、清算した場合の配当より大きくならなくてはならないことが前提となる。そうでなければ、債権者が、清算を望むのは当たり前で、民事再生法でも、破産による配当を下回るような再生計画は、たとえ債権者の多数決が得られても、裁判所が認可しないことになっている。
 そのためには、まず、破産的清算をした場合を想定してみる。つまり、会社を破産させた場合に、一般債権者にどの程度の配当が見込まれるかを試算するのである。
 この試算は、あまり難しくない。まず、会社の資産をすべて金銭評価する。売掛金のうち回収可能分を算定する。この際、問題となるのは帳簿価額(簿価)ではなく、実勢価額である。簿価にはなんの意味もない。大雑把に、土地建物がいくらかを算定し、回収可能な売掛金をカウントし、什器備品や商品等の処分価額を加え、それに現金と預貯金を足し上げる。他にも知的財産権とかいろいろあるかも知れないが、カネになりそうなものは、その市場価額を見積もる。多くの会社については、これで資産の計算はこれで終わる。メチャクチャに大雑把なものであるが、取りあえずはそれでいい。ただし、このうち、土地建物には担保権が目一杯、設定されているだろうから、売掛金と現預金等のみが、配当原資になる。
 他方、未払になっている税金や社会保険料を計算する。それから、従業員に対する未払賃金や会社を清算する場合は全員を解雇することになるから解雇予告手当(30日分の給料)と退職金を計算する。これらが優先債権になり、これら以外の取引先に対する買掛債務等が一般債権になる。
 配当原資(売掛金プラス現預金等)と、未払公租公課と従業員の労働債権とを足したものとを比べてみる。配当原資の方が大きければ、一般債権者に対する配当はゼロでないということになる。
 ついで、取引先等に対する買掛金(振出手形分を含む)と、担保を取っている銀行に対する債務でも競売によって回収できない分(銀行に対する負債額のうち、土地建物の実勢価額を上回る分)は、一般債権になるから、これらを計算する。そして、ゼロでなかった、配当原資マイナス優先債権額を一般債権の額で割り算する。これが、想定される配当率になる。
 説明が長くなった。ただ、倒産間際の会社であれば、この一般債権者に対する配当率は、ゼロか、そうでなくても、せいぜい数パーセント程度というのが実際のところであろうと思うが、再建する場合は、多少の時間がかかっても、この清算した場合の一般債権者に対する配当率を上回る弁済をしていかなければならないこととなり、それが不可能であるなら、再建は無理ということとなる。
(2) また、会社の資産に占める不動産などの固定資産の割合が大きく、しかもそれに担保権が設定されている場合など、一般債権よりも別除権の占める額が大きすぎるような場合は、一般的に再建が難しい。別除権とは、抵当権、質権などの担保権をいう。製造業者の唯一の工場にベッタリと抵当権が設定されているような場合が典型例だ。別除権者は、原則として倒産手続に拘束されることなく、担保権の実行を行うことができる。「担保権の実行」とは、要するに競売のことだ。要するに、唯一の工場が競売されてしまっては、会社は再建できるはずがない。
 競売を回避するには、担保の付けられた借金の全額を弁済して受け戻す(担保をはずす)か、担保物件を処分してその処分代金で返済するか、別除権者と協議して長期の分割弁済に切り替えることとなる。したがって、総負債のうち別除権の占める割合が大きいと、別除権債権の弁済が基本的には全額となるため、会社の別除権債権に対する弁済額が過大になり、再建が困難になる。従来、不動産価格が年々上昇していた時代では、多少会社にとって無理と思われる和議条件であっても、不動産価格の高騰で大きな譲渡益を得られたり、担保枠が拡大して新規の融資を得られたりして、再建がうまくいくケースもなかったわけではない。しかし、いわゆるバブル崩壊以後、そういったことはほとんど期待できない状況にある。
 さらに、民事再生法をもってしても、税金や社会保険料の未納分は一切カットされず、「一般優先債権」として、随時かつ優先して弁済していかなければならないから、これらの未納が多額にあることは、再建を困難にする。日常業務においては、仕入先や金融機関に対する支払を優先し、税金や社会保険料等の支払は後回しにしがちである。税務署や社会保険事務所は、取立も厳しくないし、未払が累積しても、取引停止にするとか、追加融資をしてもらえないとか、そういう目に見える制裁もないことから、税金や社会保険料は、滞納され易い。
 しかし、税務署や社会保険事務所は、判決書や公正証書なしで差押もできることになっているので、経営危機の情報がキャッチされると、売掛先等に差押通知書がばらまかれることになるし、民事再生法によってもカットが認められず、申立後の売上等から、逐次、弁済をしていかなければならないことになる。
 したがって、買掛金や借入金の他に、滞納税金や未納社会保険料が多額に上る場合も、再建が困難になる。
(3) 債務免除益の手当
 建設業界においては、公共事業の受注を得るため粉飾決算が常態化している。
 建設業に限った話しではないが、仮装経理によって繰越欠損金が過小になっていると、民事再生法によってカットを受けた金額分について発生する債務免除益を充分に相殺することができず、これにより再生認可は得られたとしても、債務免除益課税による税金の支払ができなくなり、税務倒産に陥るおそれもある。
 簡単に説明しよう。民事再生法では、例えば、未払債務の80%が免除されるが、そうすると、その80%分は、法人税法上、「益金」となってしまう。負債総額5億円の会社が民事再生の申立をすると、再生計画が認可された決算期には、負債総額の80%にあたる4億円の利益が発生したことを前提に、法人税等の税額の計算がされてしまう。
 これに対し、決算が粉飾されていなければ、欠損金が計上されているはずだ。そうでなければ、倒産しない。
 法人税法は、民事再生法による債務免除益がある場合に、損金算入を通常より多く認める特例を用意していて、通常の場合には損金算入できない青色欠損金(過去5年間)以前の欠損金でも、その事業年度において損金算入できるとしている。以前から欠損金があり、繰越控除しきれていなかった法人については恩典となる。益金と損金を相打ちさせて、税額を抑えることができるからだ。
 欠損金がないと、この益金がストレートに法人所得となる。そして、カット率が高ければ高いほど、益金、すなわち税額が跳ね上がることになる。

ポイント7 関係者の対応
 メインバンクや取引先等の理解も重要だ。
 事前の事情説明等は、原則として回避すべきことは後に説明するが、取引先の協力が得られるだろう(取引先としても、理解せざるを得ないだろう)との見込みがあれば再建に踏み切り易いが、例えば、債権カットを受け入れさせれば、仕入先が連鎖倒産してしまうような場合には、理解が得られるはずもなく、その仕入先にとって替わる先を見付け出さなければならないことになる。大口取引先が離反することが確実な場合も再建が困難といえる。
 これに対し、取引先の理解が得られる場合はもとより、関連会社などからの支援や、スポンサーの支援がある場合は再建し易いといえる。
 この他、労働組合活動が活発な場合、人員整理や退職金に関する労働争議を引き起こす。筆者の友人の弁護士が手掛けた民事再生手続では、従業員が、経営陣をまったく信用していなかったこともあって、労働争議が頻発し、結局、再建が頓挫してしまった。
3 ポイントチェックの結果
 チェックするべきポイントは、以上のとおりだが、アナタの会社は、どうだっただろうか。
 上述のポイントは、必ずしも、そのすべてをクリアーしないと再建が不可能というわけではなく、逆にすべてがクリアーであっても再建不可能な場合もないではない。ただ、その多くをクリアーしておかないと再建が難しく、多くをクリアーしていて、しかもクリアーできていない点について何らかの手当があれば再建は比較的容易といえる。
 ポイント1やポイント6の(1)については、重要ではあるが、スポンサーが事業を引き継ぐ場合や、また、債権者の多くの了解が得られる場合を考慮すると、絶対不可欠とまではいえないことになる。ただし、ポイント3については、はずせない要素といえるだろう。もうからない事業は再建できない。最低でも、不採算部門の切り離しや人員整理等によって、収益の見とおしが得られなければならない。
 いずれにしても、企業の再建には、その企業の将来の状況や関係者の協力の有無にもかかることで、ことの性質上、不確定要素が多く、スタート時点で再建の成否を読み切るのは困難であることは否定できない。相談を受けた弁護士は、上述のようなポイントを分析して、採るべき道をアドバイスする。しかし、その決断をするのは、もちろん経営者その人(取締役たち)である。
 なお、実際問題として、上記ポイントの、ほとんどをクリアーできていないという会社も少なくないと思う。民事再生法を、安直に、「平成の徳政令」と誤解している向きも見受けられるが、借金を踏み倒しておいて、明日からも商売を継続するという図々しさが、そう簡単に容認されるはずがない。認識を改め、再建のハードルはそれなりに高いものであることを肝に銘じるべきだ。
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