| (1) | まず、再建した場合の債権者らに対する支払条件が、清算した場合の配当より大きくならなくてはならないことが前提となる。そうでなければ、債権者が、清算を望むのは当たり前で、民事再生法でも、破産による配当を下回るような再生計画は、たとえ債権者の多数決が得られても、裁判所が認可しないことになっている。 そのためには、まず、破産的清算をした場合を想定してみる。つまり、会社を破産させた場合に、一般債権者にどの程度の配当が見込まれるかを試算するのである。 この試算は、あまり難しくない。まず、会社の資産をすべて金銭評価する。売掛金のうち回収可能分を算定する。この際、問題となるのは帳簿価額(簿価)ではなく、実勢価額である。簿価にはなんの意味もない。大雑把に、土地建物がいくらかを算定し、回収可能な売掛金をカウントし、什器備品や商品等の処分価額を加え、それに現金と預貯金を足し上げる。他にも知的財産権とかいろいろあるかも知れないが、カネになりそうなものは、その市場価額を見積もる。多くの会社については、これで資産の計算はこれで終わる。メチャクチャに大雑把なものであるが、取りあえずはそれでいい。ただし、このうち、土地建物には担保権が目一杯、設定されているだろうから、売掛金と現預金等のみが、配当原資になる。 他方、未払になっている税金や社会保険料を計算する。それから、従業員に対する未払賃金や会社を清算する場合は全員を解雇することになるから解雇予告手当(30日分の給料)と退職金を計算する。これらが優先債権になり、これら以外の取引先に対する買掛債務等が一般債権になる。 配当原資(売掛金プラス現預金等)と、未払公租公課と従業員の労働債権とを足したものとを比べてみる。配当原資の方が大きければ、一般債権者に対する配当はゼロでないということになる。 ついで、取引先等に対する買掛金(振出手形分を含む)と、担保を取っている銀行に対する債務でも競売によって回収できない分(銀行に対する負債額のうち、土地建物の実勢価額を上回る分)は、一般債権になるから、これらを計算する。そして、ゼロでなかった、配当原資マイナス優先債権額を一般債権の額で割り算する。これが、想定される配当率になる。 説明が長くなった。ただ、倒産間際の会社であれば、この一般債権者に対する配当率は、ゼロか、そうでなくても、せいぜい数パーセント程度というのが実際のところであろうと思うが、再建する場合は、多少の時間がかかっても、この清算した場合の一般債権者に対する配当率を上回る弁済をしていかなければならないこととなり、それが不可能であるなら、再建は無理ということとなる。 |
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| (2) | また、会社の資産に占める不動産などの固定資産の割合が大きく、しかもそれに担保権が設定されている場合など、一般債権よりも別除権の占める額が大きすぎるような場合は、一般的に再建が難しい。別除権とは、抵当権、質権などの担保権をいう。製造業者の唯一の工場にベッタリと抵当権が設定されているような場合が典型例だ。別除権者は、原則として倒産手続に拘束されることなく、担保権の実行を行うことができる。「担保権の実行」とは、要するに競売のことだ。要するに、唯一の工場が競売されてしまっては、会社は再建できるはずがない。 競売を回避するには、担保の付けられた借金の全額を弁済して受け戻す(担保をはずす)か、担保物件を処分してその処分代金で返済するか、別除権者と協議して長期の分割弁済に切り替えることとなる。したがって、総負債のうち別除権の占める割合が大きいと、別除権債権の弁済が基本的には全額となるため、会社の別除権債権に対する弁済額が過大になり、再建が困難になる。従来、不動産価格が年々上昇していた時代では、多少会社にとって無理と思われる和議条件であっても、不動産価格の高騰で大きな譲渡益を得られたり、担保枠が拡大して新規の融資を得られたりして、再建がうまくいくケースもなかったわけではない。しかし、いわゆるバブル崩壊以後、そういったことはほとんど期待できない状況にある。 さらに、民事再生法をもってしても、税金や社会保険料の未納分は一切カットされず、「一般優先債権」として、随時かつ優先して弁済していかなければならないから、これらの未納が多額にあることは、再建を困難にする。日常業務においては、仕入先や金融機関に対する支払を優先し、税金や社会保険料等の支払は後回しにしがちである。税務署や社会保険事務所は、取立も厳しくないし、未払が累積しても、取引停止にするとか、追加融資をしてもらえないとか、そういう目に見える制裁もないことから、税金や社会保険料は、滞納され易い。 しかし、税務署や社会保険事務所は、判決書や公正証書なしで差押もできることになっているので、経営危機の情報がキャッチされると、売掛先等に差押通知書がばらまかれることになるし、民事再生法によってもカットが認められず、申立後の売上等から、逐次、弁済をしていかなければならないことになる。 したがって、買掛金や借入金の他に、滞納税金や未納社会保険料が多額に上る場合も、再建が困難になる。 |
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| (3) | 債務免除益の手当 建設業界においては、公共事業の受注を得るため粉飾決算が常態化している。 建設業に限った話しではないが、仮装経理によって繰越欠損金が過小になっていると、民事再生法によってカットを受けた金額分について発生する債務免除益を充分に相殺することができず、これにより再生認可は得られたとしても、債務免除益課税による税金の支払ができなくなり、税務倒産に陥るおそれもある。 簡単に説明しよう。民事再生法では、例えば、未払債務の80%が免除されるが、そうすると、その80%分は、法人税法上、「益金」となってしまう。負債総額5億円の会社が民事再生の申立をすると、再生計画が認可された決算期には、負債総額の80%にあたる4億円の利益が発生したことを前提に、法人税等の税額の計算がされてしまう。 これに対し、決算が粉飾されていなければ、欠損金が計上されているはずだ。そうでなければ、倒産しない。 法人税法は、民事再生法による債務免除益がある場合に、損金算入を通常より多く認める特例を用意していて、通常の場合には損金算入できない青色欠損金(過去5年間)以前の欠損金でも、その事業年度において損金算入できるとしている。以前から欠損金があり、繰越控除しきれていなかった法人については恩典となる。益金と損金を相打ちさせて、税額を抑えることができるからだ。 欠損金がないと、この益金がストレートに法人所得となる。そして、カット率が高ければ高いほど、益金、すなわち税額が跳ね上がることになる。 |