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企業倒産

企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

1. 民事再生手続とは何か

(6) 申立にかかる費用

 民事再生の申立にあたり、どのくらいの手持資金が必要でしょうか。
 民事再生手続の利用にあたっては、裁判所に対する予納金、事業を継続していく上での当座の運転資金の他、弁護士及び会計士への報酬等が必要になります。
 まず、裁判所に対しては、法定の手数料(1万円。その納付がない場合、申立が不適法として却下されます(19条、民事訴訟法137条)。)の他、再生手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならないとされています(24条)。費用の予納がない場合には、再生手続開始の申立が棄却されます(25条1号)。
 予納金額については,再生債務者の事業の内容,資産及び負債その他の財産の状況,再生債権者の数,監督委員その他の再生手続の機関の選任の要否その他の事情を考慮して定めるとされていますが(規16条1項前段)、東京地方裁判所では、債務者の負債総額により、下表のとおりの基準によることとされています。

負債総額 予納金額
5千万円未満 200万円
5千万円~1億円 300万円
1億円~10億円 500万円
10億円~50億円 600万円
50億円~100億円 700万円~800万円
100億円~250億円 900万円~1000万円
250億円~500億円 1000万円~1100万円
500億円~1000億円 1200万円~1300万円
1000億円以上 1300万円以上

ただし、裁判所は、再生債務者の状況を勘案して、費用の予納額を分割して納付することを認めることがあります(分割納付を認めるかどうかは、裁判所の裁量によって決められます。)。東京地方裁判所では、申立にあたり、当座の資金繰りが苦しい場合に、予納金額の3~4割を後日に納付することを認めています。
 さらに、民事再生手続の申立にあたっては、事業の継続維持のための資金繰を確保する必要があります。申立後は手形割引や融資が困難となるため、売掛金等の回収だけが収入となります。他方、仕入代金等、取引先に対する支払は現金払いが原則で、人件費の他、電気・ガス・水道・公租公課も現金で支出せざるを得ないため資金繰が逼迫することは避けられず、申立前には、数ヶ月程度の運転資金を確保しておくことが必要になります。
 この他、申立代理人の弁護士報酬が必要になります。第二東京弁護士会の報酬規程では、事業者の民事再生事件の着手金(弁護士報酬のうち、事件受任時に申し受ける額)は、100万円以上(資本金、資産及び負債の額、関係人の数等事件の規模並びに事件処理に要する執務量に応じて定める。)とされていますが、民事再生手続の申立代理人の職務は極めて多岐にわたるため、実際上は、裁判所に納付する予納金の数割増程度から数倍程度とされることが多いようです。いずれにしても、依頼する段階において、弁護士と充分に協議することが必要でしょう。