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企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

2. 再生開始決定まで

(11) 双務契約に与える影響

 契約当事者の双方が自己の債務を未だ履行していない状態にある双務契約を、双方未履行の双務契約といいます。
 民事再生法は、再生開始決定時において、このような双方未履行の双務契約がある場合、再生債務者は、その契約を解除するか、再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求するかの選択権を持たせることとしました(49条1項)。この選択権を管財人に認める破産法59条、会社更生法103条と同趣旨の規定です。
 再生債務者が履行を選択した場合、相手方の有する請求権は共益債権になり(49条4項)、相手方は、再生手続によらず、再生債権に優先して随時弁済を受けることができます(121条1項、2項)。
 これに対し、再生債務者が契約を解除した場合は、契約関係は消滅します。
 相手方が再生債務者から契約の一部の履行を受けていた場合は、再生債務者は相手方にこれを返還しなければなりません。逆に、再生債務者が相手方から一部の履行を受けていた場合には、相手方は履行したものを再生債務者に返還するよう請求することができます。この場合、再生債務者の受けた給付が現存するときは、相手方はその給付自体の返還を請求し、現存しないときは、その価額につき共益債権者として権利を行使することができ(49条5項、破産法60条2項)、また、相手方は、契約の解除により受けた損害について、再生債権者として権利を行使することができます(49条5項、破産法60条1項)。
 ただし、再生債務者による契約解除権は、契約を解除することによって相手方に著しく不公平な状況が生じるような場合には、行使できないと考えられます。ゴルフ会員契約の当事者である会員が破産し、破産管財人が破産法59条1項に基づき会員契約を解除して預託金の返還を請求した事案について、最高裁判所は、このような解除を認めると、ゴルフ場経営会社は、本来一定期間を経過した後に返還することで足りたはずで、しかも、当初からゴルフ場施設の整備に充てられることが予定されていた預託金全額の即時返還を強いられる結果となって、著しく不公平な状況が生じるとして、この破産管財人による契約解除を否定しました(最高裁判所第三小法廷平成12年2月29日判決)。これは、破産法についての判例ですが、民事再生法上も同様に解釈されると考えられるからです。