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企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

3. 民事再生と債権者

(14) 相殺はできるのか?

 再生債権者は、本来、その再生債権額に応じて再生計画に従い割合的弁済を受けざるを得ないのが原則です。しかしながら、再生手続開始前から再生債務者に対して債務を負担していた再生債権者は、相殺によって実質的に再生債権を回収したのと同様の効果を受ける正当な期待を有していたと考えられます。そこで、民事再生法は、会社更生法にならい、開始決定時に債務が成立していることを前提に、ただし、再生債務者の有する積極財産及び消極財産の範囲を早期に確定させるため、債権債務が届出期間満了時までに相殺ができる状態(相殺適状といいます。)になる場合にのみ、届出期間満了時までにその意思表示がされた相殺を認めています(92条1項)。
 ただし、
[1] 再生債権者が手続開始後に再生債務者に対して債務を負担したとき
[2] 再生債権者が支払の停止等再生債務者の危機状態を知って、再生債務者に対して債務を負担したとき
[3] 再生債務者に対して債務を負担する者が再生手続開始後に他人の再生債権を取得したとき
[4] 再生債務者に対して債務を負担する者が支払の停止等があったことを知って再生債権を取得したとき
には、相殺が認められません(93条)。これらの場合、債権者には、相殺による恩恵を期待する正当な理由がないと考えられるためです。
 また、民事再生法は、賃料債務(地代・小作料)について特別の規定を用意しています(92条2項、破産法103条)。これによりますと、再生債権者が賃借人の場合、再生手続開始時における当期および次期の賃借料と再生債権を相殺に供することができ、再生債務者が賃借人で敷金を差し入れている場合には、その後の賃借料についても、相殺に供することができることになります。