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企業と法律

企業倒産

企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

3. 民事再生と債権者

(7) 担保権はどのように取り扱われるか

 再生債務者の財産に、[1]特別の先取特権、[2]質権、[3]抵当権、[4]商事留置権及び〔5〕仮登記担保権を有する者は、その目的財産について、別除権を有するとされています(53条1項、民事再生法付則18条による仮登記担保法19条3項の追加によって仮登記担保権も別除権とされます。)。
 別除権とは、担保権の実行を、倒産手続とは別に行って債務者所有の担保権の目的財産から優先的に弁済を受けることのできる地位のことです(53条2項)。したがって、債務者による再生手続開始の申立てがなされると、担保権者は、競売等の手段で担保権を実行することにより債権の回収を図ることになります。そして、担保権の実行によっても弁済を受けられない不足額については、予め弁済不足見込額の届出をしておくことにより、再生手続の中で、再生計画に基づく弁済を受けることができます。
 なお、民事再生法と同じ再建型倒産処理手続である会社更生法においては、担保権は「更生担保権」として扱われ、会社更生手続に組み込まれ、担保権者は、更生担保権の届出をすることにより会社更生手続に参加して権利を行使しなければなりません(会社更生法123条、124条、112条、126条)。これに対し、民事再生法においては、破産手続、和議手続、商法上の会社整理手続及び特別清算手続と同様に、担保権を別除権として扱い、再生手続に取り込むことをしませんでした。これは、会社更生法にならって担保権まで手続の制約を及ぼすことにより、中小企業の再建型手続としての迅速性が損なわれることをおそれたためといわれています。