銀座数寄屋通り法律事務所[旧 中島・宮本・溝口法律事務所] >HOME

弁護士 宮本 督

エッセイ:
to be a Rock and not to Roll

2001.06.15

誰が「商工ファンド」を潰そうとしたか

 「誰が『商工ファンド』を潰そうとしたか」(加納明弘著、フォレスト出版、http://www.forestpub.co.jp/)という本を読んだ。なかなか面白い。というか、かなり面白い。飛躍だらけの論理展開の荒っぽさを批判するのは簡単だけど、「成長しないって約束じゃん」だったのに、組織の中に個を埋没させ、新興勢力を嫌うエスタブリッシュメントたち。「商工ファンド」というモチーフで、様々な「日本の大人たち」の問題性が描き出されている。
 読み終わった頃、このWeb Siteを通じ、フォレスト出版から、本の執筆依頼が来た。何たる偶然。
 打ち合わせに来られた編集者の大谷貞雄さんに、昔引き受けた商工ローン業者相手の裁判の経験を話し、「私が『商工ファンド』を潰そうとした」というアンサーブックを書きたいといってみたが、やっぱり嫌な顔をされた。結局、前々から、一度書いてみたいと思っていた債権回収に関する本を書かせていただくことになった。
 命の次に大事なお金をめぐる争いは耐えない。争いがなければ、私たちは食べていけないし、それはそれで仕方がないこととも思うが、それにしても、なんとかならないかと思うことは多い。
 取引先が不渡を出した直後、納品した商品を強引に引き上げてしまう者がいたり、意味不明な内容証明郵便をばらまく者がいたり、とにかく、有象無象の違法合法な行為が行われる。債権回収の現場処理班をつとめる一弁護士としては、さまざまな事例を見聞きしてきたが、事前に、混乱に巻き込まれず、しかも適法にすっきりと回収できる方法もないわけではない。例えば、取引先に危険な兆候が現れたらどうするか。多くの人は、ただ、与信枠を小さくするようにとアドバイスされる。しかし、正解とは限らない。例えば、その取引先から商品を購入できるような場合は、買う。とにかく、買う。そして、相殺可能な状態を作り出す。詳しいことは、本を読んで下さい。
 具体的にどんな本にするかは大谷さんと打ち合わせ中だが、売掛先の信用不安が発生したり、売掛先とトラブルになってからのことに限らず、取引先との日常的な付き合い方等も含めたマニュアル本にする予定だ。今年中の出版を目指すことになっているが、さて、どうなることでしょう。