銀座数寄屋通り法律事務所[旧 中島・宮本・溝口法律事務所] >HOME

弁護士 宮本 督

エッセイ:
to be a Rock and not to Roll

2003.11.24

好きな映画のこと

  前置きはなし。今回は、好きな映画のこと。ただし、少しスカして、日本映画のみ。

(1) 麻雀放浪記
 84年。昭和でいえば59年。和田誠監督。真田浩之と大竹しのぶと加賀まりこと鹿賀丈史と高品格その他。
 ラストシーン。老獪な勝負師出目徳は、幻の役満「九連宝鐙」を積もりながら死に絶える。雀士達は、「死んだら負け」と、出目徳を身ぐるみはいでドブに捨てて埋葬し、更に勝負を続ける。阿佐田哲也の原作小説を凌ぐモノクロ作品で、秀逸という他ない。出目徳役で、当時、助演賞を総なめした高品格は、今見ても完璧だ。
 でも、中学生だった宮本少年が大変な悪影響を受けたのは、「ドサ健」役の鹿賀丈史のギラギラ。
 「手前っちは、家つき食つき保険つきの一生を人生だと思っていやがるんだろうが、その保険のおかげで、この世が手前のものか他人のものか、この女が自分の女か他人の女か、すべてはっきりしなくなってるんだろう。てめえらにできることは長生きだけだ。糞ぉたれて我慢して生きていくんだ。ざまぁみやがれ、この生まれぞこない野郎。」

(2) セーラー服と機関銃
 機関銃をぶっ放した薬師丸ひろ子の「か・い・か・ん」で有名な作品。主題歌も大ヒットした。
 でも、これ、いわゆるアイドル映画とは一線を画する名作。女子高生が先代組長の遺言で弱小暴力団の組長になり、対立する組の嫌がらせとヘロイン密輸事件に巻き込まれて行くという、荒唐無稽な設定の、でも、魅力的に過ぎる解説不能な名画。
 私が小学生の頃の作品だが、当時、私のクラスでは薬師丸ひろ子か原田知世か、という無益な論争が繰り広げられていた。河合奈保子以外に興味のなかった私は、この論争には参加せず、「ガキども、分かっちゃいねえな」と呟き、「おめえもだろ」との激しすぎる突っ込みはモノともしなかったが、そんなわけで、私が初めてこの映画を観たのは、大学に入って、当時は教養学部の学部長か何かで、後に東大総長となる蓮見重彦教授のゼミで蓮見先生に薦められたから。
 ちなみに、蓮見先生のゼミは、著作よりは分かり易かった。あの頃、司法試験を受けて弁護士になるなんて考えてもいなかった。懐かしい思い出。
 そんなわけで、私は、この映画のことを思うと、大学1年生とかの頃を思い出す。滅茶苦茶な日々。人に言えないことモリダクサン。でも、楽しかったです。ハイ。

(3) 太陽を盗んだ男
 この映画知ってる?1979年の作品。昭和でいうと54年。監督は長谷川和彦。出演は沢田研二と菅原文太と池上季実子とその他大勢。
 無気力な理科教師(沢田研二)が、東海村の核施設からプルトニウムを盗みだし、6畳1間の安アパートで原子爆弾を完成させる。使い途を思いつかず、結局、日本政府に対し、「ローリング・ストーンズの日本公演を実現せよ」と要求する。この映画、すごくいい。日本版の「タクシードライバー」だ、って言っても、ロバート・デ・ニーロのタクシードライバーを知らない人もいるかも知れないけど...。
 1973年って、昭和でいうと48年。日本武道館で予定されていたストーンズの初来日公演は、ストーンズの入国が認められず、公演直前に中止となった。ミック・ジャガーのドラッグによる逮捕歴が理由だったそうだ。別にいいじゃねえかと思う。だって、麻薬を売りに来た訳じゃないんだぜ。ただのロックンロール(It's only R&R)なのに。まあ、それはいいとして、太陽を盗んだ男が要求したのが、このストーンズの武道館公演だった。その後、ストーンズは、誰かがプルトニウムを盗まなくても来日するようになったが、会場は、スタジアムクラスのドームだけ。幻といわれた武道館公演は、決して実現することなく、30年の月日を経た。そして、今年、2003年。昭和でいうと、78年。ついに実現したローリング・ストーンズの武道館公演では、40代以上のファンが目立つ客席が開演前から異様な熱気に包まれていたが、そんなことが書きたかったわけではなく、この映画、ラストシーンには、がっかりするけど、それ以外は面白いです。ホントです。

(4)  シベリア超特急
 大学の先輩でテレビマンで自転車ツーキニストの疋田智氏が、ボロクソに書いていて、そこまで言うならと、最近、レンタルビデオ屋で借りてきた。映画評論家の水野晴郎先生、監督・脚本・主演の、超大型推理ロマン映画。水野センセイが自分の映画評論の集大成として作り上げた映画だそうだ。
 いや、疋田さん、どこでこんなオモチャ見付けてきたの?これ、最高。
 俳優・晴郎はド下手で、ヒロインかたせ梨乃(仕事を選べよな)も、さぞかし苦労したろうと思うが、疋田氏のいうとおり、ストーリーそのものが滅茶苦茶。デタラメ。世界唯一。天上天下唯我独尊。晴郎センセイは、こんな調子で今まで「映画評論」とやらをやっていたのかと思うと、ウソ寒いものがある。
 是非、ご鑑賞されたい...です。暇で仕方ないならね。
 ビデオのパッケージには、この映画が受賞した賞が一杯、記載されている。こーゆー世界、政治の力って、凄まじいのね。知らなかったわけじゃないけどさ。しかし、映画界の皆さんってば、羞恥心とか、そういうの、どっかにないのかよ。あーあ。