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企業倒産

企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

9. 再生計画と履行の確保

(1) 再生計画案の提出

 民事再生手続は、DIP型、つまり債務者自主管理型の手続で、再生債務者自身が再生計画案の作成・提出義務者とされています(163条1項)。なお、管財人が選任されている場合には、その管財人が再生計画案の作成・提出義務を負うことになります。
 これに対し、届出再生債権者(管財人が選任されている場合における再生債務者も)は、再生計画案の作成・提出「権」を有しています(法163条2項)。これは、会社更生法の規定にならったものですが、債権者が、債務者の財務内容、今後の事業計画を充分に把握することは極めて困難ですから、会社更生において債権者の立場から更生計画案を提出する例はほとんどなく、民事再生手続においても再生債権者が再生計画案を提出することは、極めてまれであると思われます。なお、会社更生法と異なり、債務者企業の株主等には、この再生計画案の作成・提出の権利は認められていません。
 再生計画案は、債権届出期間の満了の後、裁判所の定める期間内(この期間の末日は、特別の事情のある場合を除き、一般調査期間の末日から2ヶ月以内の日としなければなりません(規則84条1項)。)に作成して裁判所に提出しなければなりません(163条1項・2項)。なお、東京地方裁判所が公表している一般的な民事再生事件の標準的スケジュールによれば、開始決定が申立から約2週間後、再生計画案提出時期が申立から約3カ月後とされています。なお、再生計画案の提出期間は、申立または裁判所の職権により、2回までは伸長することができます(163条3項、規則84条3項)。裁判所の定めた期間またはその伸長した期間内に再生計画案の提出がないときには、裁判所は再生手続廃止の決定をします(191条2号)。
 また、再生手続においては、再生計画案の事前提出も認められており、再生債務者または管財人は、再生手続開始の申立後、債権届出期間の満了前に、再生計画案を提出することができます(164条1項)。これは再生手続に私的整理手続が先行していた場合や、簡易再生または同意再生手続を利用する場合など再生手続を迅速に進めようとする場合に利用できます。なお、再生計画案を事前提出する場合には、再生債権の内容が未だ確定していないので、権利変更の一般的基準だけ定めればよく、再生債権の個別的な権利変更の条項(157条)等を再生計画案に定める必要はなく、裁判所の定める期間内にこれらの事項を補充すればよいことになっています(164条2項)。