中島・宮本・溝口法律事務所
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NAKASHIMA MIYAMOTO ATOORNEYS AT LAW
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to be a Rock and not to Roll 宮本 督
絶望の裁判所
 元裁判官による裁判所批判の新書が話題になっている。その名も「絶望の裁判所」。世の中で広く売れているのかは知らないけど、法曹界では、ほぼ例外なく読まれている。うちの事務所でも、皆で回し読みした。
 事件を機械的に処理して、和解を強要する裁判官たちの実際や、裁判所の情実人事、権力闘争、思想統制、セクハラ等を紹介し、裁判所から得られるものは絶望だけだと言う。
 本書の記述のうち裁判所の問題点が指摘される部分は完全に正当。ただし、本書でも触れられているが、映画「それでもボクはやってない」について、「特にショッキングなものでも興味深いものでもなかった。なぜなら、ああいう事態がいつでも起こりうるのが日本の刑事司法の実態であることは、まともな法律家なら誰でもわかっていることだからである。」という指摘は、本書にもそのまま当てはまる。つまり、私たち弁護士にとっては、本書には特に驚くべき内容はない。なぜなら、指摘されているような裁判所の様々な問題点は、まともな法律家であれば誰でもわかっていることだからである。
 この本では、近年の状況が特に酷いと書かれているが、実際のところは、昔から、あまり変わらないように思う。裁判官は、自らの判断が上級審で覆ることを極度に怖がり、先例を無批判に踏襲し、硬直的に事実を把握し、創造的なことは決してしない。刑事事件では、検察の言いなり。そのような裁判官が出世していく中で、事件を「効率よく落とす」ことだけを至上目的とする事なかれ主義が蔓延している。しかも、多くの裁判官たちが、そのような実態に問題意識を持っていない。問題を問題と思わないから、私たち弁護士に隠そうとすることもしない。
 確かに状況は絶望的だ。それは本書に書かれているとおり。でもね、この著者にとっては、裁判所は、30年以上もの長きに渡ってメシを食わせてもらった組織で、その裁判所が、このような状況になったことについての責任の一端も担うべき立場にあったはずだ。それなのに、退官した直後に、それまでの言動を翻して(この人、任官中は、裁判所はよく機能しているという立場の論説を執筆していた。)、出身母体にここまでの罵詈雑言を浴びせるメンタリティーにはどうしても共感することができない。ちなみに、この著者が裁判官だった間、私は、何回か、事件で当たったことがあるのだが、およそ好きになれるタイプの人間ではなかった。仕事ができないとか不公平だとかということはないのだが、とにかく暗くて、冷たくて、感情とか人間味の感じられない人物。この国の裁判所は、このような人間を生み出してしまうという意味でも、確かに絶望的と言えるのだろう。
 なお本書では、暗澹とした司法の問題解決について、ピラミッド型のキャリアシステムでは自浄作用が期待できないとして、素朴な法曹一元(弁護士から裁判官や検察官を任用する制度)を提唱しているが、これは、およそ現実的とは言えない。だって、例えば、私が裁判官になるとして、依頼者や受任している案件は一体どうすればよいのだろう。依頼者も大迷惑だろうし、私も、裁判官を辞めた後、つまり年をとって、また一からクライアントを獲得していく自信もない。日本では、弁護士が一人でやっている個人事務所が極めて多く、ある程度のレベルで仕事をしている(要するに、まともな)弁護士であれば、裁判官になろうとはなかなか思えないはずで、そうすると、弁護士から裁判官へのなり手の確保は容易ではない。
 というわけで、状況把握は正確。ただし新規性には乏しい。解決方法の提案は、理想的かも知れないけれど現実性がない。一般向けの新書なので、専門知識はまったく不要で、読みやすい。一般の方が読む意味は大いにあると思うけど、イヤな読後感が残ることは請け合っていい。
(2014.3.31)
宮本の本棚から

「原発ホワイトアウト」若杉冽

 もう一つ、東大出のエリートさんのベストセラー。こっちはフィクション。ただ、こういうのもノンフィクション・ノベルというのだろうか。原子力行政の実態についての告発本という触れ込みだけど、ノンフィクションの部分は、全部、主に3.11以後のマスコミ報道によって既に知られている情報に過ぎず、衝撃的真実の暴露みたいなものは皆無。
 ノベル(フィクション)の部分も、プルサーマル導入に反対していた佐藤栄佐久元福島県知事に対する特捜の無茶な強制捜査(あれは本当にメチャクチャだったよね)を模した「新崎県伊豆田知事」逮捕劇とか、西山事件に擬したジャーナリストと公務員との男女関係など、オリジナリティに乏しいだけじゃなくて、意外性にも欠ける。
 本筋じゃないけど、官僚さんに女性は描けないよね。イロっぽいシーンとか、作家さんが頑張っているらしいのが、滑稽で気の毒に思えてしまうくらいだった。
 期待外れ。

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