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to be a Rock and not to Roll 宮本 督
ビフォア・キンドルにはもう戻れない

 「観覧車で夕焼けを見るなんて、なんだか…。」
 「何?」
 「分かるだろ…。」
 「私にキスしたいって言おうとしてるの?」

映画「ビフォア・サンライズ(恋人までの距離)」より

 こんな風に映画のセリフから始まるエッセイってよく見かけるよね。なんだかカッコイイ。だから私もやってみたんだけど、ただそれだけのことで、この作家志望のアメリカ人学生(イーサン・ホーク)と、フランス人の女学生(ジェリー・デルピー)が、ヨーロッパの長距離列車の中で出会い、意気投合して、翌朝までウィーンの街を歩き回り、駅でのラストシーンで、半年後、同じ時間、同じ場所での再会を約束して別れるっていう映画(95年公開)の内容は、以下の話にまったく関係ない。って、なんだよそれ。
 で、今回の話題は、電子書籍についてだ。e-bookってやつね。ちなみに、昔ながらの紙の本は、p-bookって言うらしい。pは、physical(物質の)とか、printedとか、paperとかの略。
 国内の出版市場が縮小するなか、電子書籍市場は成長を続けていて、2014年に約1000億円となった。だけど、まだ出版全体の1割に満たず、しかも販売の8割超は漫画ということだ(日本経済新聞2015年2月27日朝刊)。普及が進まない最大の理由は品揃えだろう。今、アマゾンで調べてみたけど、東野圭吾も高村薫も村上春樹も湊かなえも桐野夏生も百田尚樹も、基本、電子書籍では売られていない。買おうと思っても、売っていないわけで、そりゃ普及しなくて、当たり前。でも、これは徐々に(あるいは即座に)変わっていくだろう。
 私はと言えば、電子書籍を2年前から愛用している。購入する前は、目が疲れないのかとか、いろいろ懐疑的だったのだが、買ってみて吃驚。素晴らしい発明品だった。
 私が購入したのは、アマゾンのキンドルの廉価モデル。オプションの機能とかは何も付いてなくて、1万円ちょっと。これがお勧めだ。タブレットとかスマートフォンとかラップトップPCとかでも、電子書籍は読めるけど、読書に特化したものがよい。そうじゃないと、せっかくの読書が、ネット上の情報を読み飛ばす感じになってしまうから。あちらこちらに貼られたリンクをついクリックして、ネットサーフィンを始めてしまったり、そんなことはできない方が望ましい。
 キンドルは、単行本一冊程度の大きさで、何冊でもこれで読める。片手で持って、長時間、問題なく読める程度の重さ。ちょっと前、海外に行くタイミングで、村上春樹の「1Q84」の文庫版(全6冊)が発売されて、トランクに全部詰め込んで出掛けたりしたけど、そんな苦労とはもう無縁だ。ちなみに、充電も数週間はもつ。活字中毒者で通勤・通学の途上に読書をする人は、本が読み終わりそうだと、二冊目も持って出かけていると思うけど、その必要もなくなる。
 電子書籍は、高齢者にも優しい。文字の大きさが調整できるのだ。細かい字を老眼鏡で追う必要もなく、フォントサイズをデカくしてしまえばそれで終わりだ。
 それから、暗いところでも読める。夜中、目が覚めて、うまく眠れなくなり、それで少し本でも読もうかというような場合があるとして(私にはしばしばある)、そんな場合、部屋の明かりやベッドサイドの電球を点けるまでもない。開演前のライブハウスの暗がりや、一人で入ったバーのカウンターでも、キンドルなら読める。スマートフォンでゲームとかするほど、頭悪くないもので、これは便利。
 他にも利点は数々。まず、辞書機能が内蔵されている。私の場合、英語の勉強を兼ねて、英文の小説を読む機会が多いのだが、わからない単語を押せば(画面をただ押す)、そこにその単語の意味や発音記号や用例が表示される。
 それだけじゃなくて、検索もできる。その本の中で、または私のキンドルに入っている全部の本の中で、ある言葉やセンテンスが使われている他の個所を探すこともできる。調べものをするような場合に便利なのはもちろんだけど、この機能が最も有効なのは、固有名詞の検索だ。小説を読んでるときに、人名や地名が出てきて、これ誰だっけとか、どこだったかなって、思うことってあるでしょ。そんな時は、その人名か地名をただ押せばいい。そうすると、その本でそれまでにその人名(地名)が出てきた個所がその前後とともに表示される。それを見れば、あーこいつこいつ。とたちどころに分かる(だって、一応、読みかけの本だから)。オリジナルは英語以外で英語に翻訳されているような本では、読み方も分からない人名や地名が頻発して、誰が誰だかわからないようなことになりかねないけど、この検索機能さえあれば、そんな心配は皆無だ。
 というわけで、私は、もう、紙の本で、英文の小説を読む気は失せた。実は、紙で買ったけど未読だった本も、読むに際しては、電子書籍で買いなおしている(もったいないけど、仕方ない。)。
 そんな次第で、私の読書生活は、キンドル以前とキンドル以後に分けられることになった。名付けるなら、「ビフォア・キンドル」と「アフター・キンドル」。そして、もう二度と、ビフォア・キンドルの時代には戻れない。
 と、電子書籍の話はここまで。
 やっぱり冒頭で紹介した映画「ビフォア・サンライズ」の話に律義に戻ることにすると、二人の再会の約束は果たされたのか、それは、9年後の2004年に同じキャスティングで公開された続編の「ビフォア・サンセット」で明らかとなる。
 結論は映画を観て・・・っていう、ありがちな展開ではもちろんなくて、堂々とネタばらししてしまうけど、男の方はウィーンに行ったが、女は行けなかった。その後、男は米国で作家になる夢をかなえ、二人で過ごしたウィーンの一夜の物語を描いた小説がヒットして、パリの書店でサイン会を開催する。そこに女性が訪れて再会。男は既に結婚していて、女はまだ独身。30代になった二人が、男性の帰りの飛行機の時間まで、パリの街を歩きながら過ごす。個人的には、この二作目が、一番のお気に入り。
 そして、さらに続き。またまたその9年後の2013年。三作目の「ビフォア・ミッドナイト」が公開される。なんと二人は結婚していて(男の方は再婚。前妻との間に男の子がいる)、二人の間には娘が二人。一作目で、あんなにキラキラと輝いていた二人、そして二作目でも、まだ未来に希望を見いだせる若さを感じさせた二人は、すっかり40代の中年になり(ジェリー・デルピー…あーあ、こんなに太っちゃって)、倦怠期を迎え、激しく喧嘩している。
 この調子だと、四作目は2022年か。二人は50代。既に離婚していて、お互いの子供を介してのやり取りに、老齢を間近に控えた寂寥感とかを醸し出す作品になるのだろうか。「今から楽しみ」って言うには、少し先のこと過ぎるね。

(2015.3.20)
宮本の本棚から

「氷の闇を越えて」(原題 A Cold Day in Paradise)スティーブ・ハミルトン

 ベストセラーになった「解錠師」(原題Lock Artist)の著者だが、もともと、私立探偵アレックス・マクナイトのシリーズの執筆で知られていた。本国のアメリカでは、98年から2013年までの間、長編10冊が刊行されているが、本書はその第一作で、著者のデビュー作でもある。
 主人公のアレックスは、もともとマイナー止まりの野球選手。引退後、警官になるが、職務中、親友でもあった相棒が目の前で銃殺され、その際、自らも狙撃される。そのうちの一発が、心臓付近の摘出困難な箇所に入って、結果、胸に銃弾を残したまま生活することになり、その後、警察を退職し、私立探偵になったという経歴の持ち主だ。
 五大湖のほとりのカナダ国境に近い寒々とした田舎町を舞台に、アレックスが、野球選手や警官としての挫折、結婚生活の失敗、離婚の後に付き合い別れた人妻だった彼女への未練、亡くなった父親との思い出…といった諸々を引きずりながら、銃撃事件で負ったトラウマを克服していく様子が、静かに、しかし力強く描かれ、ミステリーの枠を超える名作になっている。
 ちなみに、翻訳版は未読。原作の英語はかなり(ホントに)平易で、英語学習の初中級者には、学習教材としても最適だ。

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