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企業のための民事再生の法律相談
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弁護士 宮本 督
2.再生開始決定まで
(4) 包括的禁止命令
 先述のように、民事再生法は、会社整理、会社更生手続にならって、他の手続の中止命令の制度(26条)を設けていますが、個別の中止命令では、対応が容易でない場合、個別の中止命令の発令を待っていては、会社の再生に重大な支障が生じる場合が想定されます。そこで、民事再生法は、再生債務者のすべての財産を一律に、全再生債権者を対象として、強制執行等を包括的に禁止するという従来の手続には例を見ない画期的な制度を導入しました。これが包括的禁止命令の制度です(27条)。この命令は、〔1〕再生債務者のすべての財産を一律に対象とすること(目的財産の包括性)、〔2〕再生債権を有するすべての再生債権者を対象とすること(債権者の包括性)、〔3〕これにより禁止される手続は、再生債権に基づく強制執行等のいずれによるものであるかを問わないこと(手続の包括性)、〔4〕すでに裁判所に係属している手続に限らず、将来的に申立てがなされる手続を一律に禁止するものであること(手続申立ての時期の包括性)等の点において、26条の中止命令とは異なっています。
 包括的禁止命令は、[1]他の手続の中止命令(26条1項)によっては再生手続の目的を充分に達成することができないおそれがあると認められるような特別の事情があるときでなければ発令されません。これは、例えば、申立の直後に、再生債務者が全国各地に有している事業所や倉庫などで一斉に仮差押えや強制執行がされ、これらについて個別に強制執行の中止を求めていたのでは、事業の継続が困難になってしまう場合などが想定されます。
 また、包括的禁止命令は、[2]予めまたは同時に、ア.再生債務者の主要な財産に関する保全処分(30条1項)、イ.監督命令(54条1項)、ウ.保全管理命令(79条1項)の処分がされている場合でないと発令されません。これは、再生債権者の権利行使を包括的に禁止しながら、再生債務者による財産の処分に何らの制限がされないのでは、再生債務者の財産散逸のおそれは依然として存在するため、再生債権者と再生債務者の双方のバランスを図ったものと説明されています。
 包括的禁止命令が発せられた場合、すべての再生債権者に対し、再生債務者の財産に対して強制執行などをすることは禁じられ、また、発令の時点で既にされている強制執行などは中止される(27条2項)だけでなく、再生手続開始決定までの間、将来の申立も禁止されます。
 ただし、包括的禁止命令は、再生債権者による個別的権利行使を一律に禁止するもので、個別的権利行使が禁止された結果、再生債権者に対して不当な損害を及ぼすかどうかについては一切考慮がされません。そこで、個別の再生債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認められる場合には、包括的禁止命令の効力は維持しながらも、その再生債権者に関しては、個別的権利行使を認めるために包括的禁止命令を解除する規定が設けられています(29条1項)。つまり、裁判所は、強制執行等の申立人である再生債権者に「不当な損害を及ぼすおそれ」があると認めるときは、その再生債権者の申し立てによって、その再生債権者に対しては包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができます(29条1項前段)。ここで「不当な損害を及ぼすおそれ」があるとは、会社更生法37条1項但書の場合と同様に、緊急に強制執行を認めないと自らが倒産するおそれが強いというような場合のように、中止等によって受ける債務者の利益に比して、中止等によって被る債権者側の損害が異常に大きい場合であると考えられています。この場合、その再生債権者は、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等をすることができ?包括的禁止命令が発せられる前にその再生債権者がした再生債権に基づく強制執行等の手続は再び続行されることになります(29条1項後段。包括的禁止命令の取り消し(裁判所は、個別的中止命令と同様、包括的禁止命令を取り消したり、変更することができます(27条3項)。)の場合とは異なり、他の再生債権者に対する禁止の効力は維持されます。)。
 以上のとおり、包括的禁止命令は、倒産法制において画期的な制度で、立法段階では非常に注目されていました。しかし、これまでのところ、東京地方裁判所において包括的禁止命令を発令した事例はなく、今後もその必要性はないと考えられているように、実際の発令されることは極めて稀といってよいでしょう。これは、民事再生法においては、個別の中止・取消命令の規定が整備されていること、東京地方裁判所においては申立から通常2週間程度で開始決定に至ることなどから、包括的禁止命令を発しなければならない必要性が考えにくいことによるものです。法律の制定にあたっては、申立から開始決定までに時間を要することを想定していたと思われますが、実際の運用上、包括的禁止命令の発令が必要とされるような事案では、裁判所としては、できるだけ早期に開始決定を発令してしまうことにより対処することになると思われます。
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