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企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

3. 民事再生と債権者

(8) 担保権者の債権届出

 抵当権者等の別除権者は、再生手続によらないで別除権を行使することができますが(53条2項)、最近は不動産価額の値下がり等の事情により、担保物件で債権がカバーされない事態が増えています。このような場合、別除権の行使によっても弁済を受けることができない債権の部分については、再生債権者として、再生手続において権利を行うことができます(別除権者の手続参加。88条本文)。
 再生手続に参加しようとする再生債権者は、再生開始決定と同時に裁判所が定めた債権届出期間内に裁判所に対して届出をする必要があり、再生手続に参加しようとする別除権者は、別除権の目的および別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額(弁済不足見込額)を届け出る必要があります(94条2項)。
 ただし、別除権の行使による不足額が確定していない間は、再生計画に基づく弁済を受けることができず(182条本文)、再生計画において、不足額が確定した場合における再生債権者としての権利の行使に関する適確な措置を定めるものとされるに止まります(160条1項)。このように、弁済不足見込額の届出を行っても、これに基づいて弁済額が定まるわけではありません。しかし、この弁済不足見込額の届出は、再生計画に基づく弁済予定額の見込みを立てるために有益であるばかりでなく、その別除権者が債権者集会において行使できる議決権の額を確定させるために意味を持ちます。
 担保権者によって届け出られた弁済不足見込額に対して再生債務者等による異議がなかった場合には、担保権者の議決権の額が確定し、別除権行使による弁済不足額の確定の前であっても、この価額に応じて議決権を行使することができます(117条2項)。これに対し、弁済不足見込額について再生債務者が認めない場合には、その別除権者に対して議決権の行使を認めるかどうか、及びいかなる額につき議決権を行使させるかについては、裁判所が決めることになります(117条3項)。