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企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

4. 再生債務者の財産調査・財産確保

(3) 否認権とは

 破産法や会社更生法には、債務者が財産的に危機的状況にあるときに、一部の債権者のみを有利に扱う等、債権者間の公平を害する行為をした場合や、不当に財産を減少させる等、債権者を害する行為をした場合、債権者間の公平を図るため、後にその行為の効力を否定し、逸出した債務者の財産の回復を図る制度が設けられています(否認権)。民事再生法においては、和議法と異なり、破産手続や会社更生手続と同様に、否認権制度が採用されることになりました。

〔1〕 故意否認

 まず、127条1項1号は、「再生債務者が再生債権者を害することを知ってした行為」が否認の対象となる旨を定めます。ここでいう「再生債権者を害する行為」とは、債権者の財産の引当てになるべき財産の価値を減少させ、または他の債権者に不公平を生じさせる行為をいいます。ただし、再生債務者の行為によって利益を受けた者が、その当時、この意味で再生債権者を害する事実を知らなかったときは否認の対象にはなりません。

〔2〕 危機否認

 127条1項2号から4号までは、いずれも危機否認と呼ばれる類型です。これらは、再生債務者が危機的状況にある時期に行った行為の外形によってされる否認で、故意否認のように再生債務者の害意を必要としません。
 同項2号は、再生債務者が支払いの停止または破産、再生手続開始、整理開始もしくは特別清算開始の申立があった後にした再生債権者を害する行為及び担保の供与または債務の消滅に関する行為について否認の対象と定めています。ここでいう「支払いの停止」とは、債務者が期限の到来した債務を資力が欠乏したことにより一般的・継続的に弁済できないことを外部に表示する行為と解釈されています。ただし、否認できるのは、これにより利益を受けた者が、その行為の当時、支払いの停止等があったことまたは再生債務者を害する事実を知っていたときに限ります(2号但書)。
 同項3号は、2号に該当する行為で再生債務者の親族または同居者を相手方とするものです。
 同項4号は、再生債務者が支払いの停止等があった後またはその前30日以内にした担保の供与または債務の消滅に関する行為であって、再生債務者の義務に属せず、またはその方法もしくは時期が再生債務者の義務に属しないものです。ただし、債権者が、その行為の当時、再生債務者が他の再生債権者との平等を害することを知って当該行為を行ったという事実を知らなかったときは、否認の対象となりません。

〔3〕 無償否認

 次いで、127条1項5号は、再生債務者が、支払いの停止等があった後またはその前6カ月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為について、否認の対象とします。
 民事再生法においては、否認権を行使する権限を有するのは、管財人または利害関係人の申立または職権で裁判所により特定の行為について否認権を行使する権限を付与された監督委員です(135条1項)。否認権行使により再生債務者財産は原状に復します(132条1項)。すなわち、再生債務者から逸失した財産は再生債務者へ復帰することになります。
 なお、一定の場合には、転得者に対する否認権の行使も認められます(134条1項)。