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企業のための民事再生の法律相談

弁護士 宮本 督

9. 再生計画と履行の確保

(8) 再生計画の変更・取消し

 再生計画の履行を確保するために、民事再生法はさまざまな工夫をしています。和議手続においては、債務者が和議の履行を怠ったときの債権者のとりうる手段として、譲歩の取消と和議の取消の制度がありました。しかし、譲歩を取り消した債権者は、譲歩の取消しによって回復した債権額について、和議の履行の後でなければ権利を行使することができず、また、和議の取消には、未履行債権者について和議の可決要件と同様な同意が必要とされていたところから、実効性に乏しい制度であると批判されていたことによるものです。民事再生法では、再生債権者表に確定判決と同一の効力を与え、強制執行を許すこととした(180条)他、再生計画取消の制度等が設けられています。

〔再生計画の変更〕

 まず、再生計画の認可決定後、やむを得ない事情で計画の実行が困難となったときは、再生債務者(申立代理人)、管財人及び監督委員等は、再生手続終結前に限り、裁判所に再生計画の変更の申立ができます(187条1項)。再生計画の履行が困難となったとき、直ちに破産手続に移行するよりも、再生計画の一部の変更によって計画の履行が可能になるのであれば、債権者の利益にも合致するからです。
 この場合、再生債権者に不利な影響を及ぼすと認められる再生計画変更の申立があった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定が準用されます(187条2項)。
 なお、この再生計画の変更は、再生手続終結前にしかすることができませんから、再生手続の終結後は、債権者との個別交渉で、弁済条件の変更を承諾(個別和解)してもらうよりありません。

〔再生計画の取消し〕

 また、再生債務者等が再生計画の履行を怠り、未履行再生債権額の10分の1以上の再生債権者から申立てがあると、裁判所は再生計画の取消をすることができます(189条1項2号、3項)。再生計画の取消し決定が確定すると、再生計画によって変更された再生債権は原状に復します(189条7項本文)。
 再生計画の取消決定が確定した場合、再生債務者に破産原因があれば、裁判所は破産宣告をすることができます(16条1項)。

〔民事再生手続の廃止〕

 再生計画認可決定確定後に、再生計画の履行が著しく困難となったときは、裁判所は再生債務者等・監督委員の申立により、または職権で、再生手続の廃止を決定しなければなりません(194条)。再生手続が廃止になると、原則として破産手続に移行します(16条1項)。