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弁護士 宮本 督

エッセイ:
to be a Rock and not to Roll

2002.04.16

天国への階段

 ベトナム戦争の最中、沖縄の米軍基地から前線に向けて飛び立つ若い兵士達が、出発前、ジュ-クボックスでLed Zeppelinの「天国への階段」をかけていたという。
 きらきらと輝くものはすべて黄金と信じる女性。彼女が手に入れようとしているのは、天国への階段。西に目を向け、立ち去ることを悔いて泣く魂。木々の向こうに浮かぶ煙の輪。それをじっと見守る人々の声。魂より高い影。笛吹の呼びかけ。ささやく風に横たわる天国への階段。
 ケルト文学の影響を指摘されるロバート・プラントの詩。その歌にからみつく、ジミー・ペイジのギター。
 昨年、白川道の小説「天国への階段」を書店で見かけ、即座に上下巻ともに購入してしまった。そして、性懲りなく、テレビドラマ「天国への階段」の第1回目も見てみた。歌の解釈はご自由だろうが、それにしたってねぇ。カラヤンも絶賛したというこのロックナンバーの解釈はいろいろあるが、ドラマで繰り返し流される度に、大切なものに泥をかけられるような気になるのは、私だけなのか。
 地獄へと旅立つ若い米兵達が受け止めたLed Zeppelinのメッセージ。揺るぎない岩のような信念。ただ生き抜くため、それだけのために。
 じっと耳を澄ませば、あの調べが聞こえてくる。帰り道は二つに分かれている。でも長い目で見れば、まだ自分の歩むこの道を変えることもできる。白光を放つ女性は、礎となるために、そして揺らぐことのないように(to be a Rock and not to Roll)、天国への階段を手に入れようとしている。...多分、今、このときも。