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to be a Rock and not to Roll 宮本 督
もっとも幸せな休日の過ごし方
 村上春樹の新作『騎士団長殺し』が発売された2月24日は金曜日だったので、その日の夕方くらいから土日にかけては、仕事も(ほぼ)オフにして、ゆっくりとたっぷりと読みふけることができた。なんと言っても、第1部と第2部を併せて1000ページ以上ある。自宅のソファーで、古いロックを聴きながら、お酒は控えめにして、新しい物語の世界にどっぷりと浸ることができた。優雅で贅沢で最高に幸せな休日。
 新作の内容や感想は、まだ発売されて間もないから控えることにするけど(芸術作品というより、そういう扱いの似合うポップカルチャーですよね。多分)、喪失感、性描写、身近な異界、それと現実世界とのネジれ、井戸(ちょっと違うけど)、学生時代からの友人、オペラ、ロック、料理、ローティーンの少女、色彩、芸術家の日常と創作活動、リトルピープル(って名前じゃないけど)、上田秋成・・・エトセトラエトセトラと、昔からのファンにはお馴染みの舞台と大道具・小道具のてんこ盛りで、しっかりと楽しませてもらった。
 村上春樹のファンになって久しい。もう30年以上になる。『ノルウェイの森』がベストセラーになる少し前、高校1年生だった私は、クラスメイトに借りた『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』にノックアウトされて以来、新刊が出る度に、発売直後に購入して一読し、しばらくして再読し、何年かしてまた読み返すというのを繰り返してきた。ちょうど、音楽ファンたちが、好きなミュージシャンの新しいアルバムを発売と同時に購入してターンテーブルに載せ、その後、何年も繰り返し聴き続けるように、私も、大学生のころ「国境の南、太陽の西」に落胆し、司法試験の受験中「ねじまき鳥クロニクル」に戸惑い、弁護士として独立したころ「海辺のカフカ」に狂喜してきた。当初、二冊セットで発表された「ねじまき鳥〜」や、「1Q84」の続編の登場に驚かされもしてきた。長編小説に限らず、短編小説、エッセイ、インタビュー集、ノンフィクション、旅行記や文学案内もあるし、彼が翻訳家として翻訳した英米文学の作品も数多く、これだけ多作でありながら、明らかな駄作が見当たらないというのも、よくよく考えてみればスゴイことだ。実際、村上春樹のファンだという人と話をする機会があると、皆が皆、好きな作品として、違ったタイトルを(そして多くの人が複数の作品のタイトルを)口にする。
 そして私自身についていえば、40代も半ばを過ぎて、相も変わらず、10代の頃や20代の頃と同じように、新しい小説を心待ちにして、それを楽しむことができるというのは、誰がなんと言おうと(今般の新作のデキがどうであろうと)、そのこと自体、素晴らしいことと思える。それがもちろん、もう68歳になった村上春樹の精力的な仕事ぶりのお陰であることはいうまでもないのだが、読み手としても、1000ページを超える小説を受けとめるのは、それほど楽な営為ではない。音楽と違って、それは勝手に鳴り響いてくれるものではなく、主体的に、一行一行、時間をかけて読んでいかなければならないのだ。その咀嚼には、それなりの体力と時間と、ある程度の感受性が必要不可欠だ。
 そんなわけでこの週末は、弁護士なんていう極めて実務的で実践的で実利的な日常業務を続ける傍らで、真新しい長編小説を受容できる状況と環境にあることの幸運を噛みしめることのできる幸福な休日でもあった。
(2017.2.28)
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